7355 「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」
初台にある東京オペラシティ アートギャラリー「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」を鑑賞。本展は、ちょっとユニークな経緯で作られた作品が紹介されている。
- ガラス作家・山野アンダーソン陽子が、18人の画家に対して「自身で描いてみたいガラス食器」について言葉で伝えてもらう。
- 山野がその言葉を受けてガラスを吹く。
- できあがったガラス食器を見ながら画家が絵を描く。
- 写真家・三部正博が画家たちのアトリエを訪れて写真を撮る。
ガラス作家の山野アンダーソン陽子を中心とした、たくさんのアーティストによる“共同作品”という感じだろうか。画家がリクエストしたガラス食器と、その食器を描いた絵と、さらに写真と3つがセットになっている。
ガラス食器をリクエストするなんて、ふつう経験なんてないし、自分だったらどんなふうにリクエストするだろう?
たとえば、作品の解説に、
「牛乳を飲むためのグラス」「小ぶりで、牛乳の冷たさを指で感じられる薄いグラス」
なんてリクエストもあったようだ。
なるほど、具体的な用途をイメージするのもアリか。
最初に紹介されていたのが、このガラスのコップ。
そして、絵と写真。
世界にただ1つしかないガラスのコップを中心に、物語が広がる感じがして興味深い。
ガラスは、ちょっと不思議な物質だなぁ…とも思う。ふだんは冷たく涼しげなのに、作るときはとてつもなく熱い。
山野本人の説明にもあったが、ガラスは再利用できるので、ごみとして廃棄しないで済むのは気持ちが落ち着く…とあって、たしかに…と思った。
ただ、本展の全体を通して感じたのは、ちょっとした物足りなさだった。
というのも、そもそも、これらの作品のきっかけになっているのは「自身で描いてみたいガラス食器」について言葉で伝えてもらうところなのに、なぜか、この言葉がほとんど紹介されていないのだ。
ガラス作家と画家とのやり取りは、いわば“往復書簡”とも言える。
その往復書簡の内容が隠されて、その書簡を読んだ感想だけを見せられている感じがするのだ。
どういった依頼があって、それをどう解釈して作品にしたのか、そしてそのできあがった作品をどのように思って絵にしたのか…ということを知りたいのだが、それは目の前にある作品から判断してほしいということなのだろうか。
このあたりは、軽いストレスに感じてしまった。