7334 企画展「うるしとともに ―くらしのなかの漆芸美」
漆(うるし)は、英語で「japan」と呼ばれているという。陶器のことを「China(中国)」と呼ばれたりするのと同じで、産地が由来の表現のようだ。
それくらい、漆は日本を代表する存在なのだ。
泉屋博古館が収蔵する漆の作品の数々を紹介する企画展「うるしとともに ―くらしのなかの漆芸美」を鑑賞してきた。
最初の展示室1については、撮影可能だった。
《花鳥文蝋色蒔絵 会席膳椀具》
収蔵しているのは30人分あるらしいが、とてもすべてを展示しきれず、10人分だけ。それでもすごいボリュームで、そのいずれの漆器も手が込んでいるわけで、言い方は変かもしれないが、ちょっと“恐ろしく”なってくる。
《扇面謡曲画蒔絵 会席膳椀具から丸盆》
黒い漆地の丸盆の蒔絵は、能楽の謡曲に由来する意匠だそうだが、いずれも描かれているのは扇面だけだ。これは、背景や小道具などだけで内容を表現する「留守模様」と呼ばれる意匠で、あえて登場人物を登場させないのだ。
つまりこの意匠だけで、能楽のどの場面かがわかる…って、作る側の使う側も相当な知識を持っていることになる。
展示室2以降は撮影はできなかったが、《八吉祥文學來如意》という作品の解説で、如意は「意の如く」「思いのまま」背中を掻くためのの“孫の手”だったが、それがやがて僧が読経の際に、威儀を示すための仏具となった…というのあった。
へぇ!“如意”とはそんな意味があったのか…と初めて知った。
初代芝川又右衛門という蒔絵に情熱を注いだ人がいて、蒔絵技術の研究と後身の育成、殖産興業を目指し、住友と共同で、浪花蒔絵所〜日本蒔絵合資会社を設立したという。
万博で展示したときには人気だったそうだが、売れ行きは芳しくなかったという記述があった。
海外で売り上げた利益を育成経費に回す目論見は外れたという。
商売というのは難しい。