7242 「激動の時代 幕末明治の絵師たち」

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サントリー美術館「激動の時代 幕末明治の絵師たち」
サントリー美術館「激動の時代 幕末明治の絵師たち」

サントリー美術館で開催中の「激動の時代 幕末明治の絵師たち」を鑑賞。19世紀の日本は、長らく続いた徳川幕府による統治が終わって、世界と交流が一気に進んでいく時代に入った。

その中心となった、江戸・東京で活動した絵師たちは、そうした世の中とどう向き合ったのか…といった視点での展覧会という感じだろうか。

観賞し始めた直後に、エデュケーターによる鑑賞ガイドがあるということで、参加してみた。

20分でざっと見どころを紹介してもらったあとに、本展の鑑賞へ。

まず、本展の内容とは直接は関係ないが、解説の文字が大きくなっていたのがとてもよかった。

これはサントリー美術館に限らないが、ガラスに貼られた解説は目の前だからいいけど、足元にある解説はどうしたって距離があるのに、なぜか文字が小さくて読みづらかった。

しかし今回はこれまでとは明らかに違う大きさだったから、配慮してくれたのかもしれない。

フォトスポット以外は撮影不可だったので、気になった作品を簡単にコメントしていく。

狩野一信《五百羅漢図》1854~63年(嘉永7~文久3年)
五百羅漢といえば、川越の五百羅漢を思い出してしまうせいか、勝手に呑気な地蔵のイメージだが、こちらは、みんな怖い。陰影がハッキリすることで存在感を強めている。これらは増上寺の所蔵ということもあってか、昨年見に行った三解脱門夜間公開を思い出した。

服部雪斎《葡萄と林檎図》1881年(明治14年)
かなりリアルに描かれた葡萄と林檎。解説では「これまで美術史では取り上げられることが少なかった」とあったが、なぜなのだろう。

安田雷洲《水辺村童図》1840年(天保11年)
今回の展覧会で初めて知ったのだが、江戸における銅版画家としては司馬江漢、亜欧堂田善に続く、 重要で優れた作家らしい。これは彼の洋風肉筆画のなかで早い作例らしい。奥行きがある遠近法を用いた構図、そして線描は銅版画のよう。こうした絵に登場する人の顔つきがどうも日本人らしくない感じがするのは、海外から制作手法を学んでいるせいなのだろうか。

安田雷洲《赤穗義士報讐図》江戸時代(19世紀)
アムステルダムで発行された聖書の挿絵 「羊飼いの礼拝」を完全に取り込んで、それを「忠臣蔵バージョン」にしたとも言える作品だ。
聖母マリアを大内蔵之介に、ランタンを蝋燭にアレンジするあたりは許容範囲としても、赤ん坊のイエスキリストを吉良上野介の生首にしてしまうのはなかなかすごい。

春木南溟《虫合戦図》1851年ごろ(嘉永4年ころ)
擬人化した虫たちが戦争している。”擬人化”はよく見られる手法だけど、見るたびに、よくこういう発想ができるもんだと感心してしまう。朝顔の花が咲いているのかと思ったらこれは大砲の車輪でさらによく見るとその本体はイモムシ。戦争しているくらいだから、よほどのことが起きているのだろうけど、いったい彼らは何と戦ってるんだろう…。

月岡芳年《魁題百撰相 井上五郎兵衛》
月岡芳年《魁題百撰相 井上五郎兵衛》

月岡芳年《魁題百撰相 井上五郎兵衛》江戸〜明治時代(19世紀)
上野戦争を取材したものだそうだが、これに直接関わる浮世絵は禁止されていたため、歴史上の人物になぞらえて描かれたという。それにしてもこの構図は、映画のポスターのように決まっている。

柴田是真《貝図》1877〜86年(明治10年代)
この作者は、ちょっと前に板橋区立美術館で見たばかりだから、よく覚えている。漆と螺鈿…そして本物の貝を用いた独特な作品。

小林清親《隅田川夜》1881年(明治14年)
自分にとっては、”電柱展”以来、すっかり身近な作家となっている。対岸の明かりが川面に反射して、提灯がいいアクセントになっている。影絵のようなシルエットがとてもいい雰囲気を醸し出している。これが日本画?と思わせるこれが”光線画”と呼ばれる独自の技法で、とても見事だ。

Posted by ろん