2692 熊田千佳慕展
銀座松屋で開催中の熊田千佳慕展に行ってきた。
銀座松屋 |
以前、新聞広告に載っていたので展覧会自体は知っていたものの、行こうと決断したのはおじゃこだった。ちょうど行こうと考えていたところで、作家の訃報を知ったので、ビックリした。
熊田千佳慕は、長年「ファーブル昆虫記」の絵本化に取り組んでいたことから、“プチファーブル”と呼ばれたという。
広告やポスターの絵を見ると、それはまるで写真のような美しさと、生々しさが感じられた。
絵は、ぼかしなどは一切ない。繊細で曖昧さがまったくない。どこにも妥協を許さない作者の思いも伝わってきた気がする。とにかく細かい。200点あまりの展示は、百貨店の展覧会にしてはかなりのボリューム。見応え十分だった。
絵は、筆の毛先2、3本に絵の具を付けて描く手法で、気の遠くなるほどの時間を掛けて仕上げていくという。
彼の代表作となった、ファーブル昆虫記の絵本化をライフワークとしたのは、なんと70歳ごろ。
“99歳の細密画家”なんて呼ばれていたが、作品を見ると、彼から“老い”という言葉を全く感じさせない。年齢のことをいうのは、むしろ、大変失礼ではないかとすら思う。
虫や花たちは今日を悔やんだり、明日を思い悩んだりせず、今この瞬間だけを懸命に生きている
展覧会の会場で見かけたこの言葉を読んで、いまの自分をちょっと省みてしまった。とても有意義な展覧会だった。