7228 特別展「日本画聖地巡礼 ─東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門─」
山種美術館で開催中の特別展「日本画聖地巡礼―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―」を鑑賞。
ドラマや漫画などに登場した実際の場所を訪れることを「聖地巡礼」と呼ばれるようになって久しい。
日本画でこうした聖地巡礼をやってみようという企画だ。
そういった意味では、以前は、江戸名所百景で作品と描かれた場所を見に行くという、似たようなことをしてたが最近はできてない。
冒頭で思わず見入ってしまった、奥村土牛《鳴門》は、文字通り鳴門の渦潮を描いている。この色が、何とも言えない緑色なのがとても印象的だった。これが青だったら、これほど気にはならなかった気がする。
撮影ができなかったので、鑑賞後にいただいたこの作品をモチーフにした和菓子をここに載せてみる。
岩橋 英遠《カムイヌプリ》…カムイヌプリとは、カムイ=神、ヌプリ=山ということで、北海道にはいくつか存在するそうだが、ここで描かれているのは、摩周岳とのこと。「ブロッケン現象」が日本画に描かれるなんて珍しい…と思ったら、この作者の昭和40年代の作品にはよく登場するらしい。
橋本明治《朝陽桜》…日本三大桜の一つとしても有名な、福島県の「三春の滝桜」が描かれているという。「胡粉」によって花弁が描かれているので、”エンボス”のような感じになって、作品全体に立体感がある。
今回の作品は、すべての実在する場所を描いているということになっているが、写真と比べると、より”脚色”が加わる要素が強くなる。
どういったところに作者の思いというか意図が入るのか…というところが、自分なりの見どころのように感じた。
今回、ほぼすべての作品に並べて現地の写真が紹介されているので、比較すると、”そのまんま”を表現したかったのか、それともちょっと”盛って”表現したかったのか…というところが垣間見えた気がする。
岩橋 英遠《懸泉》、奥田 元宋《奥入瀬(秋)》、石田 武《四季奥入瀬 秋韻》といったあたりは、まるで現地にいるような感じだった。
米谷 清和《暮れてゆく街》は、かつての東急百貨店東横店南館を描いたもので、先述の作品とはちょっと違うけど、やはりそこの雰囲気をよく表していた。
ちなみに、こちらの作品は、今回はダメだったが、以前は写真撮影可だった。
同じように、小林古径《弥勒》も以前の特別展では撮影できたが、今回は不可になっていた。
こういった、その現地のようすをそのまま表現した作品とは対照的に、速水 御舟《名樹散椿》(重要文化財)は、椿の”エッセンス”を抜き出したみたいな感じ。京都の昆陽山地蔵院を描いたというが、なんだか、モチーフとなった場所を意識させないくらい。
こちらも撮影ができなかったので、鑑賞後にいただいたこの作品をモチーフにした和菓子をここに載せてみる。
山口 華楊《木精》は、京都府北野天満宮にある欅の根だという。気になるのは、じっとこっちを見ているミミズク。自身が飼っていたミミズクを置いてみようと思い立ったという。もちろん現実には起きてない光景だが、こういう”遊び”も面白い。
京都市右京区小倉山付近を描いたという東山 魁夷《秋彩》、石田 武《吉野》、奥村土牛《吉野》などを見ていると、ぜひ行ってみたいと思えた。
まさに聖地巡礼のきっかけにもなりそうだ。