6905 企画展「闇と光―清親・安治・柳村」

博物館・展覧会,芸術・デザイン

太田記念美術館
太田記念美術館

「小林清親」を知ったのは、1年半ほど前の練馬区美術館で開催された「電線絵画展」で、江戸より続く伝統的な浮世絵(錦絵)に、近代的な”電線”が描きこまれているという対比が面白かった。

そして、その半年後、同じ練馬区美術館でも彼の作品を鑑賞したが、どちらの企画展でも、とても印象的だったのは、リアルさと陰影だった。

太田記念美術館で開催中の「闇と光―清親・安治・柳村」は、まさにその点に注目した企画展だ。

浮世絵(錦絵)でありながら、かなりリアルに描きこまれていて、描かれた場所の雰囲気が伝わってくるようだ。

企画展「闇と光―清親・安治・柳村」
企画展「闇と光―清親・安治・柳村」

“闇と光”に意識を置いていたようで、全体的に暗めではあるのだけど、そのぶん、よく見ようとするせいか、何だか引き込まれる感じがする。

今回とても興味深かかったのは、使われた色だけが変わった作品が紹介されていたことだった。

同じ原版でも刷るときの色が違うから、雰囲気がまったく異なったものになっているのだ。

空の色が変わるとそこに描かれた時間がガラッと変わるし、大火事の炎や炎に照らされたところがより赤く染まると火事の強さも大きく変わってくる。

これは版画だからこそできる芸当だ。

また、表面にニスを塗って西洋画の雰囲気を出したものなどもあって、試行錯誤の跡がうかがえた。

ちなみに、さきほどの、大火事を描いた作品では、この火事をスケッチに行ったとき自宅を全焼してしまったうえに、妻にも出て行かれたという”いわくつき”のものだ。

そのショックで、こうした写実的な彼独特の技法である”光線画”をやめてしまった…とも伝えられている。

Posted by ろん