3326 「あこがれのヴェネチアン・グラス」展

博物館・展覧会,芸術・デザイン

久しぶりに、東京ミッドタウンに行ってきた。

サントリー美術館で開催されている「あこがれのヴェネチアン・グラス」展を鑑賞するためだ。

ヴェネチアン・グラス…と聞いて、思い出せる情報は…正直何もない。

せいぜい、イタリアのヴェネチアに由来することくらいしかわからない。

で、ちょっと予習していった。

ヴェネチアン・グラスは、古代ローマ時代に起源を発するといわれているが、正確なところはわかっていないらしい。

かつてガラス製品が珍重された時代、輸出で莫大な利益を得ていたヴェネツィア共和国は、技術が国外に流出しないよう、強力な保護政策を取る。

火事を防ぐという名目で、ヴェネチア本島の隣のムラーノ島に、グラス工房や職人、家族を強制移住させる。島外に脱出する者は死罪というくらいの厳しさだった。

島に閉じ込められた職人たちは切磋琢磨し、後世に残るすばらしい作品を生み出す一方、それでも島から逃げ出した職人たちがヨーロッパの各地に散らばり、そこでもさまざまな作品を作り出していったという。

開館からまだ1時間ほどしか経ってないのに、館内は混雑していた。

鉛を含まないソーダ石灰を使用しているのが、ヴェネチアングラス特徴ということらしいが、見た感じだとよくわからない。また、高い装飾性も特徴ということだったが、今回展示されていた作品は、僕が勝手にイメージしていたような、コテコテした装飾ではなく、精錬された感じだった。

興味深いと思ったのは、ムラーノから流出した技術に新たな改良が加えられていったのが垣間見えたということだった。

17世紀、ドイツで作られた、「ダイヤモンドポイント彫りレーマー」は、ダイヤモンドを使ってグラスに装飾を施し、さらに、持ち手のところには、ラズベリーの装飾を施し、滑り止めを兼ねることで、実用性も持たせていたようだ。

また、17世紀末から18世紀頃、ドイツで作られたとされる、鹿形パズル・ゴブレットは、酒宴での余興用のゴブレットだそうで、そのまま呑もうとすると、ガラスでできた鹿が邪魔での呑めないが、台座近くにある小さな穴をふさぐと、あら不思議…サイフォンの原理で、ワインが中央の管を上って、鹿の口から飲めるという。

展示は、ユーラシア大陸を越えて、はるばる日本までやってきたヴェネチアン・グラスも展示している。

江戸時代に作られた、藍色ちろりは、取っ手の捻り方や、口の伸ばし方は、明らかにずっと見てきたヴェネチアン・グラスそっくりだった。

まったく、門外漢の分野だったが、ヴェネチアン・グラスの歴史をたどることで、いろいろと興味深い世界を知ることができて楽しかった。

2011年10月10日まで開催。

Posted by ろん