7290 館蔵品展「展覧会のちょっといい話」

板橋区立美術館で開催中の「館蔵品展 展覧会のちょっといい話 絵本と近代美術のあれこれ」を鑑賞。
館蔵品展ということで、当然ながら区立美術館が収蔵している作品の紹介となるのだが、これまで開催してきた企画展を振り返ったり、収蔵品の作家にスポットを当てたり…と、“一味”違った展示だった。
まずは、作品とともに作家にまつわるエピソードを学芸員が、作品とともに紹介していく。
作家やその周囲の人たちの人となりがわかると、初めて見る作品から伝わってくるものが違うような気がしてくる。

以前大きく話題になったという企画展「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」で紹介されていた絵本も多数展示されていた。
インドのチェンナイにある出版社タラブックスによる世界で最も美しいと言われる絵本だ。
なんと一冊ずつ、伝統技術を用いて手製本されていて、しかもすべての絵本に“シリアルナンバー”がついている。
いかにも“インドらしい”作品もあるし、なにより手にとったときの手触りがよい。
もはや芸術品の域だ。
イタリアで作られた”触る絵本”は、どれもすばらしく、どれもワクワクするものばかりだった。
いくつか紹介していくと…

バッグのデザイナーによる”絵本”。
バッグを開けると、さらにそれぞれの持ち主の紹介ととても精巧に作られた小さな開閉可能なバッグが出てくる。
そのバッグを開けると、その持ち主らしいものが入っているのが楽しい。
おばあちゃんは、飴ちゃんで、お父さんはイヤホンと書類だった。
こういうことって万国共通?

「国境」という、ちょっと絵本にしては、”かたい”タイトル。開いてみると、どんなところに国境が引かれているのか、”しかけ絵本”として表現されている。
当たり前にように思っていることでも、こうした”絵本”という表現方法になると、また違って見えてくるから不思議だ。

「ゆびさきのおはなし」という絵本?は、箱を開けると、好きなように解釈ができる、さまざまなプレートが入っている。好きなプレートを取り出し、面ファスナー付きの”白紙”の本に貼り付けることで、好きなお話ができるというものだ。
先述の本も含めて、どれもバリアフリーで、視覚障害の有無にかかわらず楽しめる仕組みになっている。
他にも、イラストを並べ替えて、好きな単語を表現する「えひらがな」のコーナーや、童画家の武井武雄が手掛けた小さな絵本などが紹介されていた。どれも、じっくり観始めると、とても短時間では見切れないほどの充実さだった。