7289 「深掘り!浮世絵の見方」

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太田記念美術館
太田記念美術館

太田記念美術館で開催中の「深掘り!浮世絵の見方」を鑑賞。

これまで、いろいろと浮世絵を見てきたが、あまり体型立てて知識を得ることはなかったので、こういった”見方”を紹介してくれる機会は貴重だ。

こちらの残念なところは、一切の写真撮影が不可なことだが、仕方がない。

かなりコンパクトな展示ではあるが、7つの章に分けて、浮世絵の見方を紹介している。

「深掘り!浮世絵の見方」
「深掘り!浮世絵の見方」

第1章「深掘り!グレート・ウェーブ」
「グレートウェーブ」と呼ばれるほど世界から高い評価を得ているが、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を中心に紹介。
そのなかで、波の色に用いらえている藍色についての解説があった。実はこれは 「ベロ藍」と呼ばれていた人工的に作られ輸入された合成顔料なのだという。
プロイセン王国の首都ベルリン由来のため、ベル藍と呼ばれるように…。日本を代表するといっても過言ではない浮世絵の色が、日本から遠く離れたヨーロッパから調達されたものだとは驚き。

第2章「深掘り!浮世絵版画の作り方」
浮世絵は一人の絵師が最初から最後まで手掛けているわけではなく、絵師が描いた絵をもとに彫師が木の板を掘って、摺師が紙に擦るという作業を経ている。しかし、こうした過程で作られたものはほとんど残っていないのだという。本展では、その過程を再現したものを紹介している。ものすごい手間をかけて作られていることがよくわかる。

第3章「深掘り!浮世絵の「線」」
絵画においてもっとも重要な要素のひとつ「線」に着目。浮世絵は、”凸版”という性質上、細い線を残して、それ以外を彫るものだ。たしかに、髪の毛、網目、雨など、とてつもなく狭い間隔で彫られていることがわかる。もはや”ミクロン”単位だ。そこまで細かくなくてもよさそうなものだけど、こうした技術によって浮世絵が作られいているのだ。

第4章「深掘り!摺りの違い」
絵画は”一点もの”だが、浮世絵は同じ作品が何枚も作られる。最初は200枚摺り、多いと7000枚も擦られたという。これだけ摺られると最初のころと後のほうではさまざまな違いが出てくる。ここではそうした違いについて紹介している。同じ作品でも、色だけでなく、描かれている内容そのものまで変わったり、版元などの変更など、さまざまな情報が読み取れるようで面白い。

第5章「深掘り!浮世絵の「端」
一般的な絵画のようにキャンバスに直接描かれるのではなく、浮世絵は”転写”するというプロセスを経るため、浮世絵の端に注目すると、浮世絵ならではの発見があるようだ。この浮世絵の刷り位置を合わせるために、版木のふちに付けたL字型の位置決めのことを「見当」というそうだ。「見当をつける」「見当はずれ」などという、この「見当」は、浮世絵の世界が由来のことばなのだ。

第6章「深掘り!浮世絵の文字」
髪の毛などの細かな表現と同じく、文字の表現も注目だ。一瞬忘れそうになるが、版画だからずべてひっくり返した文字を彫っているのだ。この文字には、さまざまな情報が盛り込まれているという。このあたりは、作品解説でしっかりと紹介してほしいところ。あらためて、文字を見てみて思ったのは、特に”漢字”がとても読みやすいと感じたのがちょっと不思議。

第7章「深掘り!江戸の暮らし」
ここで取り上げるまでもなく、浮世絵には、人々の暮らしぶりがとても生き生きと描かれている。浮世絵を通じて当時の人たちの暮らしを見ることができるのだ。

今回の展示は、これから浮世絵を鑑賞するときのヒントになりそうな内容で、とても興味深く鑑賞できた。

Posted by ろん