2534 夢から日常、そして過去へ
鉄道好きではあったが、新幹線は好きではなかった。画一的な車両、無駄が排除され効率や機能性が追求された世界は、どこか取っつきにくい気がしていたからだ。
ところが、ちょっとずつ新幹線のことを知るにつれ、従来の鉄道同様に、奥深さと言おうか、さまざまな紆余曲折を経て、現在に至っていることがわかると、俄然興味が出てきた。
技術的な制約を受け、時代に翻弄され、偶然や奇跡としか思えないようなことなどの積み重ねを経て、世界初の超高速鉄道、新幹線0系は誕生する。
それから40有余年。
いずれ引退する日がくくるだろうと数年前、限られた時間だったが見に行った。博多駅で見た0系は、500系や700系の行き交う中をひっそりと、そして黙々と働いていたが、それを写真に収めようとしていたのは僕くらいだった。
「夢の超特急」と呼ばれた0系新幹線。実現すると、その便利さ快適さから、“夢”から“日常”になった。
そして、ついに0系は“過去”になる。
きっと。がむしゃらに頑張ってきたのだろうと思うと、感情移入せずにはいられない。