3783 本当にバカの壁だったのだろうか?
3月16日には東急東横線と副都心線の相互直通運転開始のほかに、九段下駅で、ちょっとした変化があった。
それは、東京メトロ半蔵門線と都営新宿線の九段下駅にあった、ホームの仕切(壁)が撤去されたのだ。
いままでは乗り換えのためにいったん階段を上がり、一方の改札を出て、もう一方の改札に入り、ふたたび階段を下りて乗り換えなければならなかったことが、“条件によっては”、同じホームで乗り換えができるようになる。
どう変わったのか、見に行ってみた。
滅多に利用しないせいか、それともすごく自然な感じに仕上がっていたせいか、ホームに降りた瞬間には、以前の様子をすぐに思い出せなかった。

よく見れば、細かなところで、壁の痕跡を見ることができた。
ホームが広くなったことで、すごく広々としていたし、それぞれの路線カラーに合わせたベンチなども良いアクセントになっていた。
しかし…である。
これって、どれくらいの人が便利になるんだろう?と気になった。
というのも、両線はそれぞれで独立して運行されているため、乗り換えができるのは、ホーム一面しかないのだ。
つまり、こんな感じだ。この話をしたくて、下記のような図を作ってしまった。
A 半蔵門線渋谷方面からやってきた人が、新宿線新宿方面に向かう場合
B 新宿線岩本町方面からやってきた人が、半蔵門線渋谷方面に向かう場合
しかも、Aの場合は、半蔵門線から、手前の永田町で有楽町線に乗り換えれば、別途初乗り料金を取られることなく、市ヶ谷に行ける。
Bに至っては、新宿線から半蔵門線に乗り換えるにしても、わざわざ九段下まで来なくても、手前の神保町には両線に駅があるし、さらにその小川町では、同一駅の淡路町から、丸ノ内線に乗れば、大手町に行くことができる。
つまり、直接の恩恵を受ける乗り換え客が、極めて限られているのではないかということだ。
この壁撤去は、当時の猪瀬直樹副知事が提唱し、不便さの象徴として、この壁を“バカの壁”と称したというが、壁撤去を伝えるニュース(キャッシュ)には…
この壁はメトロと都営の経営統合を唱える猪瀬直樹都知事が、不便さの象徴だとして「バカの壁」と名付けていた。撤去されたのはホーム全長210メートルのうち約90メートル分で、改札階の改装も含めた費用は約12億円。1年3カ月前から工事を始めていた。1日の乗り換え客はメトロと都営を合わせた利用者計約22万人のうち2000人程度という。
九段下駅利用者約22万人のうち、乗り換え客は…たったの2000人しかいない。さらに、上記のように、直接の恩恵を受ける乗り換え客は、もっと少ないはずだ。
他の利用者も、ホームが広くなったことで、安全面での意味はあるとはいうものの、12億円の費用を掛けることが、果たして本当に適切な投資と言えるだろうか?と疑問を覚える。
そもそも、東京メトロと都営地下鉄は、別法人による経営なのだから、改札が分かれ、壁や仕切があるのは、仕方のないのではないか?
それだけに、“バカの壁”というのは、ちょっとあんまりじゃないかと思ってしまうのだ。
問題はそこではなく、問題から派生した結果が、“壁”だったにすぎない。
問題を解消せずに、派生した結果を対処療法で対応しても、限界がある。
やはり経営統合なり運賃一本化がゴールであって、どうせお金を掛けるのなら、そちらの進捗に掛けて欲しい。
もしかすると、実は、これは世論を盛り上げるための、巧妙な作戦のひとつかもしれないけど。