東北新幹線沿線の不思議と謎/栗原 景
- 東北新幹線沿線の不思議と謎
- 栗原 景
- 実業之日本社 (2021/12/2)
母の実家が岩手にあったこともあって、かつては東海道新幹線よりも東北新幹線の方が身近だった。
東北新幹線の開業で、ほぼ丸1日掛かりだった移動がが大幅に短縮された記憶もある。
また完成までに、かなり時間が掛かったということもよく覚えている。
東海道新幹線はとにかく完成期日が最優先だったこともあって、相当な突貫工事となり、実際着工からわずか5年で完成している。
一方、東北新幹線は大宮〜盛岡間の暫定開業で16年、全線開業までには実に39年もの歳月が掛かっているのだ。
これは、良くも悪くも東海道新幹線の影響を受けたものであり、開業が期待された一方で反対の声に翻弄された結果でもある。
知ってるつもりで知らなかったことも多く読み応えがあった。
建設期間が長期にわたることから、どうしても当初の計画通りにはならないものだし、路線が長いから必然的に関係者も増え、いろいろな意見が出てくる。
その折り合いをつけた産物が、いまの新幹線なのだ。
その東北新幹線のルート選定は、上野〜大宮間を除けば、東海道新幹線と比べて容易だったようだ。
これは東海道新幹線と比べて大都市が少なく、比較的平坦な地形が多かったからだという。
しかし、那須塩原駅付近では、駅の設置場所の関係もあって当初は11通りの候補があり、決定してからは駅名の決定でも大揉めになったという。
その結果決まった「那須塩原」という駅名が、その後「那須塩原市」と自治体名になってしまったことからも、新幹線の影響力の大きさを感じる。
車窓から気になるタワーもしっかり紹介されていた。
東北新幹線では、宇都宮と仙台で気になる“鉄塔”が見える。
通称宇都宮タワーは、新幹線建設時のテレビの電波障害対策で作られた。建設費の一部は旧国鉄が負担した。
仙台では3本のタワーが見えるが、いずれもテレビ塔だ。
多くのテレビ塔は共通化される気がするが、仙台では一部は共有されているものの、テレビ局によって異なっているのも興味深い。