7305 事件の”波紋”
大きなできごとがあるとそれに派生というか、波紋のように、別の問題が出てくることは多い。
元日の能登半島地震では、多数の著名人による被災地入りが物議を醸しているし、翌日の羽田空港航空機衝突事故では、“荷物”とされているペットの扱いが話題になっている。
こうした問題が大きくなるのは、誰もが納得できる正解がないからだ。
どの主張もそれなりに理屈はあるとは思うが、やっぱり、一定の結論はあると思う。
■著名人の被災地入り
地震から1週間近く経って被害の全貌はつかみ切れていないようだし、被災者への支援も行き届いていないであろうというのも容易に想像できる。
この状況を知れば、誰もが何とかしたいと思うのも自然な流れではある。
そこに、ある程度、お金や時間に余裕がある著名人が、被災地に入って”活動報告”をする…これは、ある程度は予想されたことではある。
彼らも現地の状況を知ってほしいという思いはあるのだろう。
しかし、なぜ被害の状況が見えづらかったり支援が行き届きづらいのかを考えたら、被災者にとって何が重要なのか、おのずと見えてくるような気がする。
地震により被災地へ通じる多くの道路が分断したことで、応急処置で通行できるようになった道路に集中し、渋滞がひどいようだ。
こういった状況下では、できるだけ効率よく物資の運搬することが求められよう。
個人ができることは、きわめて限られていることから、個人での現地立入を控えてほしいという考えのは合理性がある。
そう考えれば、YouTuberや芸能人が個人で被災地に入る意味に疑問符がつくのは自然なことだ。
そんな中、こんなニュースがあった。
衆議院議員の山本太郎氏が、”電話ではなく現場の話を直接聞くため”として、レンタカーで現地入りして、さらに炊き出しのカレーを食べたことをSNSに投稿したという。
炊き出しをしたのではなく一緒になって食べたのだ。
ただでさえ、さまざまな物資が不足しているなかで、被災者を増やすような行動に、強い違和感を覚えた。
彼のこうした活動がいったい何につながるのか…さっぱり理解できない。
■”荷物”扱いされるペット
羽田の航空機衝突事故では、旅客機の乗員乗客が全員無事だった一方、2匹のペットが犠牲になったことで、ペットの扱いについて議論が噴出している。
ペットは人間と同じ家族の一員なのに、助け出せなかったのはかわいそう…という気持ちは痛いほどよくわかる。
軽く想像するだけでも涙が出てきそうなくらいつらくなってしまう。
ペットが置かれていた場所が貨物室だったということが、議論を大きくさせてしまった。
話が発散してしまってる感があるが、論点は「ペットを客室ではなく貨物室に入れておくことの是非」と「緊急時にペットと一緒に避難できないか」の2点あるようだ。
前者については、ペットアレルギーや、鳴き声、においなど、動物特有の問題はあるだろうが、同じ客室内で隔離するなどの対策はできるかもしれない。
しかし、後者については極めて難しいだろう。
というのも、緊急時はすべての手荷物を置いて脱出することが、飛行機における避難の鉄則であって、これは日本に限ったことではない。
おそらく世界中のすべての航空会社で同じルールになっているはずだ。
議論を見聞きしていると、話が少し捻じ曲げられて、日本が特別な規定を設けているように誤解されている節もある。
たしかに海外では客室にペットを持ち込める航空会社もあるし、日本でも羽田と北九州を中心に就航している航空会社スターフライヤーでは、ペットと一緒に飛行機に乗れるサービスがある。
しかし、この場合でも、脱出時にはペットは客室内に置いていく必要があるとなっていることに注意が必要だ。
ペットは人間と同じ家族の一員ではあるが、人間ではない。
だからこそ、旅行には移動手段も含めて細心の注意が必要であり、飛行機にしても船舶にしても、移動中は人間とは別の場所で過ごすことを覚悟しなければならない。
引っ越しなどやむを得ない移動ではない限り、飼い主は選択ができるのだから、こうした移動手段を取らなければよいのだ。
もっとも、こうした航空機事故に遭遇する確率は、他の移動手段と比べて格段に低いのだから、それほど心配の必要もない気もするが。
同じ客室に載せてほしいというのは、気持ちはわかるが、旅行に連れて行こうとする時点で、飼い主のエゴそのもののようにも思えてしまう。