7283 企画展「動物園にて ―東京都コレクションを中心に」
東京都美術館で開催中の「動物園にて ―東京都コレクションを中心に」を鑑賞。
東京都美術館のすぐ隣にある上野動物園は、日本最古の動物園だ。
わが国における動物園の誕生から現在に至るまで、動物園に関連する資料を集めた企画展だ。
博物館の附属施設からはじまった動物園は、その経緯から博物館のような面もありながらも、その性格はまったく違う。
基本は展示が動かない博物館と違って、対象が生きて成長するから入園するたびに展示内容が変わるともいえる。
国立のままの博物館がある一方で、国立の動物園がないのはちょっと不思議。
西洋の文化を取り入れるなかで手探りで始まった動物園の運営も、時代を経ていくなかで、求められることも大きく変わっていくことが展示のなかでもわかる。
上野動物園の隣の東京美術学校…現在の東京芸術大学では、実際に対象を観察しながらその形を描き写す「写生」がカリキュラムに組み入れられ、入園料免除や小動物を貸し出すなども行われたという。
当時の東京市の広報用ポスターや入場券等、広報物のグラフィックデザインを手掛けていた、東京市公園課の田井正忠の作品の紹介が、今回最も気になったところかもしれない。
動物園恩賜10周年を記念して動物写生図をカラー印刷した入場券が多数紹介されていた。
どの作品も、写真のようなリアルさで、動物の特徴をよく捉えていた。
当初は全16種類だったそうだが、たくさんの種類を作るということは、何度も来てもらうという意図があったのだろう。
当時からそうした考えがあるのも興味深いし、21時まで延長しての夜間開園などを告知するポスターなどもあった。
昭和初期ともなると、いまとほとんど変わらなかったのだ。
他にもいろいろと気になった作品はあったが、今時珍しい、全作品写真撮影不可だったこともあって、詳しく紹介できないのは残念。
こうした見どころの多い企画展が、無料で観られるのは嬉しい。