5318 ホキ美術館
3月に入り、2017年度も最後の月となった。
このままでは、有給休暇を大量に余らせたまま終わってしまうということもあるし、自分の中では、ちょっとくらい休んでもいいだろうという思いもあり、有給休暇にしてしまった。
以前から行ってみたいと思っていた、ホキ美術館へ。
日本初の写実絵画専門美術館で、まるで写真のような細密画を収集展示している。
写実絵画は、以前から関心があって、初めて買った美術展の目録は、新宿伊勢丹で開催されていた、リチャード・エステス展だった。
調べてみると、1990年の開催だというから、もう30年近くも前になる。
作家の個性や手法によって、さまざまな作風があるが、その多くは、写真と見紛う作品ばかりで、そのリアルさに圧倒された。
絵なのに筆のタッチがまったくわからず、いったいどうやって描いてるんだろう?と思わせる作品や…
画面の奥の方に焦点を合わせ、手前の風景をあえてピンぼけにすることで、本当の写真のように見せる作品…
人物画であれば、髪の毛の一本一本、手の甲の静脈や、膝のほんの僅かなかすり傷までもが、鮮明に描かれていたりする。
抽象絵画と異なり、影になった部分は暗くするだけではダメで、実際に見えてるはずのものはすべて描かなければならないという点で、一切の”ごまかし”が利かないのが写実絵画だと思う。
また逆に、写真はシャッターを押した瞬間のすべてを記録してしまうが、写実絵画は作家の理想的な世界を”創る”ことができる。描きたくない部分は描かないという選択ができるからだ。
写真のようで写真ではない。そういった点で、いま目の前に広がる世界は、存在しそうで、実は存在しない世界とも言えるかもしれない。
写実絵画を一同に集めるといった展示は、ありそうでなかった。自分のような絵画に詳しくない人でも、理屈抜きで楽しめる。
残念ながら館内は一切の写真撮影が不可なので、詳細は説明が難しいが、様々な工夫が興味深い。
館内で配布しているパンフレットに記載があるが、すべての照明をLEDにした上で、美術館では珍しい一部では自然光を取り入れたり、ピクチャーレールは使わず、吊具はすべてマグネットを使っているおかげで、絵が見やすい位置にすっきりと設置されていたりと、絵画を鑑賞する環境としてもよく考えられている。
また、建物に入ってしまうとわからないが、展示室の一部(約30m)は宙に浮いている状態で、独得な外観は一見に値する。
浮いている展示室は裏手になるが、その下が従業員用の駐車場として使われているらしく、せっかくの建物の見栄えが悪くなってしまって残念だった。
公園に隣接しているから、勝手に「森のなかにある」と思い込んでいたから、周囲が住宅地になっていたのが意外だった。
ものすごく変わった建物と、建売住宅の整列とのコントラストが、なんとも面白い。
せっかく来たのだから、どこかに寄ってみようとも思ったが、時間も中途半端だったので、そのまま帰ることにした。
今回はレンタカーで来たので帰りは渋滞に巻き込まれて大変だったが、来てよかった。