6858 気づかない人生
電車に乗って座っていたら、隣の若い男性は足を組んでいた。
足を組むとどうしても場所を取るし、実際自分が彼の隣に座ろうとしたときも、組んだ足を避けながら座るしかなかった。
空いているうちは別にそれほど気にならなかったが、車内は次第に混雑し始め、ついには、足を組んだ彼の前にも乗客が立った。
混雑していることに気づいていないわけではないようで、組んだ足を少し手前には寄せたものの、一向に足を組むこと自体はやめなかった。
そのため、靴の先が、その乗客のスカートにしっかりと触れてしまった。
その状態がしばらく続いたが、少し車内が空いてきたのを見計らったかのように立つ場所を移動したので、この“異常な状態”はなくなった。
それにしても、この男性は、いま自分の目の前に起きていた状況をどう思ったのだろう…と想像したが、そもそも、まったく気づいていないのだろう…という気もした。
「いまあなたの靴が前に立っている女性のスカートに当たってますよね?」
と伝えれば、足を組むのをやめるかもしれない。
いや、もしかするとやめないかもしれない。
「なぜ、当たってはいけないのか」
…と逆に質問されるかもしれないという気もした。
自分が周囲にどういう状況を生み出しているのかも気づかず、なぜそれがダメなのかということも気づかないからこそ、いつまでも足を組むをやめなかった…となると、なかなか事態は深刻だ。
この男性、まだ若いとはいえ、そこそこの年齢に見えた。
誰からも指摘されなければ、これからも“気づかない人生”を歩んでいくことになるわけで、無関係ながら、ちょっと心配になってくる。