3663 駅は誰のものか?
それは当然、鉄道会社のものだ。
でも、それだけでいいのか?という疑問をあらためて感じたのは、日経ビジネスオンライン「ルミネに立ち向かった喫茶店新宿の有名店「ベルク」を存続させたファンの力」という記事を読んだからだ。
舞台は、新宿駅東口改札前にある喫茶店「ベルク」。
ちょっと長いが引用する。
事の発端は、2006年4月に「マイシティ」(当時)の家主だった新宿ステーションビルディングが、同じJR傘下のルミネに吸収合併されたことにあった。ベルクが入居していた駅ビルは名称を「ルミネエスト」と改め、20代〜30代女性を囲い込むべく店舗のリニューアルが進められた。
そんな中、ルミネがベルクに持ちかけたのは、それまでの「普通借家契約」から期限付きの「定期借家契約」への変更だった。
定期借家契約は、借地借家法の改正により2000年から導入された賃貸契約の新制度だ。普通借家契約の場合、何もしなければ自動的に契約が更新される上、貸主は「正当な理由」がない限り契約更新を拒否できなかった。一方、定期借家契約では、貸主は立ち退き料を払うことなく借家契約の更新を拒否できる。
書類にサインすれば、営業権という「命綱」をルミネ側に握られることになる――。事前に定期借家契約の「特性」を熟知していたベルクの井野朋也店長と迫川尚子副店長は、この申し出を突っぱねた。
その後、契約変更ではなく、より強硬に立ち退きまで要求されてしまう。
この状況に対して、常連客の署名運動や国会でも取り上げられるなどして大きな騒動となったが、結局、現在の契約がそのまま更新され2015年3月末までは営業できることとなったという。
街歩きをしていて、以前から感じているのは、都内やその周辺の駅にだんだんと特徴がなくなり、どこに行っても同じお店ばかりになっているということだ。
駅ビルを運営する側からしたら、より収益の上がるテナントを入れた方がいいに決まっている。
収益が上がるテナントということは、利用者の支持があるテナントという見方もできるわけで、何の問題があるか?という考え方もできる。
でも、本当にそうだろうか?
それを求めているのは誰だろう?
利用者? 鉄道会社? 鉄道会社の株主?
特徴ある個性的な店をなくしてまで、徹底的に収益を上げるべきなのだろうか?
都内やその周辺の主な駅は、黙っていても人は集まる特別な場所だ。
そんな特別な場所を独占している者の意見ばかりが通ってしまうとすれば、駅は、どんどんつまらなくなっていきそうな気がする。