電柱鳥類学/三上 修

■いきもの

街で見掛ける、スズメやカラスといった鳥は、もっとも身近な自然といってもいいくらいの存在だとお思う。

あたりまえのような鳥たちが止まっている電線や電柱は、登場してからわずか150年程度で、地球や生命の歴史とは比べ物にならないほど短い。

それにもかかわらず鳥たちは上手く活用している…という、本書のまえがきを読んで、なるほど、そういう見方もあるのか…と思った。

本書の著者は、都市に生息する鳥類を研究する学者で、鳥たちと電柱・電線との興味深いエピソードを紹介してくれる。

冒頭は、電柱や電線の基礎知識の紹介にあてられていて、これはこれでとても面白い。

中盤は鳥の電線の止まり方の特徴などが紹介されていて、鳥たちは、ただ適当に止まっているのではないことがわかる。

後半は電柱に巣作りをする鳥たちとの戦いについて。

営巣による停電等のトラブルを防ぐために、巣を取り除く作業が年間17.5万個も行われているそうだ。

最近では、取り除く代わりに、あえてトラブルの起きない場所に巣を作るように誘導したり、人工巣を作るという試みが効果を上げているそうだ。

なるほど、これはいいアイディアだと思ったら鳥が近所に迷惑を掛けることも考える必要があるようだ。

たしかに、鳥ではなく電力会社が作った巣がきっかけとなれば、苦情は電力会社に行ってしまうだろう。

難しいものだ。

 

Posted by ろん