伝書鳩―もうひとつのIT/黒岩 比佐子

■いきもの,龍的図書館

4166601423 伝書鳩―もうひとつのIT
黒岩 比佐子

文藝春秋 2000-12
売り上げランキング : 276673

Amazonで詳しく見る by G-Tools


 冒頭、著者があるインターネットのウエブサイトで目にしたという「日比谷公園に鳩が多いのは、もともとこの近辺に新聞社が多く、かつてそこで伝書鳩として働いていた鳩の子孫が集まっているからだ」という文章が目にとまった。なるほどそういうこともあるのか…と思いながら、読み進めていったが、実はそういうことではなく、もともと伝書鳩として従事していた鳩たちは愛鳩家に引き取られ日比谷にいる鳩とは関係ないということが書かれている。先祖が伝書鳩だったらちょっとおもしろかったのに…。有線通信が非常時には使えず、無線通信もまだ登場したばかりで心許ない時代、帰巣本能に基づいた鳩の能力を生かして、情報が上空を行き交っていた時代があったのだ。ピカソとモネの絵を見分けられるくらい、鳩の高い能力は結構知られているが、第二次大戦後アメリカでは、鳩を使った誘導装置の開発をしていたという。ミサイルにコックピットと同様の操縦席を設けそこに鳩が乗せられ、訓練を受けた鳩が敵の目標物に向かっていく様は、まさに特攻隊だ。結局科学技術が鳩を超えたためにこの開発は中止されたらしいが、鳩の能力の高さを思い知らされる事実だ。伝書鳩に関する知られざるエピソードがたくさん載っている。これまでベランダにやってくる鳩除けや「フン害」対策といった話題しかあまり関心がなかったので、これからはちょっと鳩を見る目が変わるかもしれない。
(2004/9/11) 【★★★★☆】 -04/09/11更新