妻のトリセツ/黒川 伊保子
- 妻のトリセツ
- 黒川 伊保子
- 講談社 (2018/10/20)
冒頭から「あぁ!」と心当たりのある記述があった。
女性脳は、体験記憶に感情の見出しをつけて収納しているので、一つの出来事をトリガーにして、その見出しをフックに何十年もの類似記憶を一気に展開する能力がある。(p.16)
女性には、これまでの自身の経験や知識を総動員して、それを一気に引き出す能力があるらしい。
これは、女性がもともと備わっている、子供を守ろうとする母性本能で、目の前で起きている事態に即座に対処するためにどう対処すべきかを、瞬時に判断することに長けているのだ。
さらに興味深いのは、他人の体験であっても、共感して感情の見出しがつけば、自分の体験と同じように扱えるということだ。
女性たちの間でよくある“オチのない井戸端会議”は、他人の経験を自分に取り込んでいるという実はとても重要な行為なのだという。
何気ない女性ならではの行動にそうした背景があるとわかると、とても面白い。
また…女性は「心の通信線」「事実の通信線」という2つの通信線を使って会話をするが、男性は「事実の通信線」のみ…という仕組みも興味深い。
女性と男性のトラブルの原因は、この”通信線”の肯定と否定の組み合わせによるのだというのだ。
まず、男性には「心の通信線」を持ち合わせていないから、悪気なく「事実の通信線」で否定してしまうと、女性にとっては「心の通信線」も否定されたと判断されてしまうらしい。
自分自身のこれまでを振り返ってみると、たしかに、何かあったとき、まず大事なのは当然“事実”だと思っていたし、それを前提に会話をしてしまうが、なかなかトラブルの解決に至らないことは多々あった。
つまり、そもそも異なる通信線でやり取りしていたから、会話は成立していなかったのだ。
事例として挙がっていたファミレスでの女性たちの会話。
誰かが「マンゴーパフェ美味しそう」と言って、他の女性がマンゴーの美味しさに対してみんな同意するものの、結局他の誰もマンゴーパフェを頼まないけど、最初にマンゴーパフェ美味しそうと言った人は別に機嫌を損ねることはない…という。
なるほど、事実は否定してるが、心は肯定しているので問題ないのだ。
こういうとき、自分なんかは、どこか後ろめたさみたいなものを感じてしまう。
似たような例を思い出した。
以前、取り上げたことのある、スーパーなどの試食だ。これなどはまさにまったく同じ構図だと分かると、かなり合点がいく。
前述のように過去から引き出される記憶は、ネガティブなものばかりでなく、ポジティブなものもある。
素敵な楽しい思い出も同じように扱われているそうだ。
女性がよく意識する“記念日”は、まさにトリガーなのだという。
そして、そのトリガーに対して、しっかり予告することが大事だという。
予告して予定が変わったり、実行できなかったらどうしよう…なんて考えてしまうが、その予告に対して楽しみに待つプロセスが女性脳を幸せにしているから、あまり気にする必要はないという。
そういったことがわかると、“サプライズ”は、実はもったいないプランであり、場合によっては、逆効果になると考えた方がいいようだ。
最後に、これも、あまりになるほど!…と思ったところなので、そのまま引用する。
いくら家事をしっかりしてても、男性にとっては些細なことに“見えて”も、女性にとってはそうではないことも多々ある。
いくら一生懸命やったとしても、汚れが残っているとか、ゴミが取れていないと、努力を労うどころかケチを言う。
これも女性と男性で“見ている世界”が違うからだという。
男性は、空間認知力が高く全体や機構が見える代わりに、目の前の観察力が低い。目の前のものが見えてないので、前述のようなことが見えてないし、髪型や化粧などの変化にも気づきにくい。(p.72)
実体験と本書に記載されていることがあまりに的確に言い当てているので、ちょっと怖いくらいに感じる一方、無意識のうちにちゃんと?本書にあったような対策もすでにやって来たことが少なくなかったのに、それでもトラブルは起きているという事実…。
男女の心のやり取りのなんと難しいことかと、あらためて考えさせられる。