承認をめぐる病/斎藤環
本書は、思春期精神医学が専門の著者が、多くの若者たちの研究を通じて、現代の若者たちの心を解説していく。
かわいらしい表紙のイメージに反して、内容は、僕にとっては、かなり難しかった。
前半部分で、エヴァンゲリオンを例に、若者の心理を解説されていたが、あいにく知らないために、理解には繋がりにくかったものの、比較的スムーズに読むことができた。
まず、思春期の若者において「キャラ」の存在を抜きにしては、悩みに共感すること自体難しいということ。
キャラとは、本人の本質とは無関係の、その組織における「いじられキャラ」「毒舌キャラ」といった「役割」のこと。
クラスの中のコミュニケーションを通じて、自然発生的にキャラの棲み分け、ないし振り分けがなされ、クラスないでの位置づけが決定される。
これは、コミュニケーションスキル(=コミュ力)と併せて、スクールカーストの序列を決定づけているという。
たまたま以前読んだ本にも通じる部分があったから、このあたりは、すっと理解できた。
スクールカーストにおける序列化は、総選挙によって序列化させるAKB総選挙に通じる、同じメカニズムがあるという。
キャラは、コミュニケーションスムーズにする反面、自分のキャラを逸脱した行動を抑圧するという副作用を持つ。忠実にキャラを演じ続けることで、人格的な成長や成熟が抑え込まれてしまう可能性もあるのだ。(p.21)
キャラやコミュ力に固執するのは、なにより「承認」されるということが非常に重要な価値を持っているということらしい。
大学時代のテキストにも載っていた「マズローの欲求段階」をここで見るとは思わなかったが、若者にとって、もっとも最上位にあるとされた「自己実現」よりも「承認」のほうが高いという。
5. 自己実現
4. 承認
3. 関係
2. 安全
1. 生理的
たしかに、TwitterやFacebookの例を見るまでもなく、現代では特に、誰かから承認してもらうことが、人生の中で重要な要素になっている。
その手段として、スマートフォンが存在するのだとすれば、若者の支出はそれが最優先となり、相対的に他の支出は減る。
「承認」というものが若者の消費動向まで左右しているという状況は興味深い。
全体的に、おもしろい内容ではあったが、後半に進むにつれ、ちょっとついていけなくなってしまった。