有名建築その後/日経アーキテクチュア

■建築・都市,龍的図書館

有名建築その後 有名建築その後
日経アーキテクチュア

日経BP社 2009-06
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建物は、いったん建ってしまうと、誕生の背景や経緯、その建物の抱える問題点などなかなか知ることができない。それらが、明らかになるのは、たいていの場合“取り壊し”が決まったときだ。

そんな建物の出自を興味深く紹介する日経アーキテクチュアの連載記事「有名建築その後」から選ばれた20の建築物が載っている。

冒頭では、東京駅丸の内駅舎、東京中央郵便局、東京都庁舎、大阪府庁舎本館について、保存活動と改修に関するレポート。そして簡単ではあるが、我が国を代表する建築家である、前川国男や磯崎新、丹下健三、村野藤吾、菊竹清訓、もちろん黒川紀章なども紹介。

僕が建築に興味を持つきっかけになった、中銀カプセルタワービルの例を見るまでもなく、特徴的な建物が建つのは偶然ではなく必然ではないか。その時代の“空気”がその建物を生むのではないか?と思う。

中銀カプセルタワーの章で、印象的な一文を引用する。

15年前、未来の都市住宅のあり方を示すものとしてカプセルマンションが造られた。それがいつの間にか、ワンルームマンションやカプセルベッドなど、混乱する年の現状を象徴するものへと“発展”してしまった。「表街道」を目指した提案が「裏街道」で栄える-と言ったらいい過ぎだろうか?

(中略)

この提案を正しく受け止め、後押しできなかった「社会」の責任の方が重大であろう。
日本の都市の歪みを計る「原器」として、今後も存在し続けなければならない宿命を背負っていると言えるのかもしれない。

建築物はその時代を映す鏡であり、それがいまも残っているということは、まだその建物がその時代に建っていることが許されているとも言える。逆に言えば、その建物が残れるかどうか、社会が試されているとも言えるし、残った建物は、まるでタイムカプセルに近い存在のような気がする。

雑誌の再掲ということで、本の中に雑誌のカラーコピーを見るような感じになっている。そのため本の大きさよりも、実際に載っている面積が小さく、必然的に文字も小さくなってしまい、最近の僕には見づらい感じ。

大事なのは記事そのものだ。これは、あくまで演出だろうから、こうした載せ方をすること自体あまり意味がないような気もする。

※本書で紹介されている建築物
国立西洋美術館、神奈川県立近代美術館、アートプラザ(旧大分県立大分図書館)、国立国会図書館、神奈川県立音楽堂、国立京都国際会館、国立代々木競技場、名護市庁舎、目黒区庁舎(旧千代田生命本社ビル)、新宿三井ビルディング、読売開館、ソニービル、キリンプラザ大阪、中銀カプセルタワービル、スカイハウス、甲子園会館(旧甲子園ホテル)、名古屋大学豊田講堂、世界平和記念堂、東京タワー