帰ってきたもてない男/小谷野 敦

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帰ってきたもてない男 女性嫌悪を超えて (ちくま新書 (546)) 帰ってきたもてない男 女性嫌悪を超えて (ちくま新書 (546))
小谷野 敦

筑摩書房 2005-07-06
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「帰ってきた」というくらいだから、前作もあるのだろうと思っていたら、やはり続編。前作「もてない男」を見ていないので知らなかったが、結構な反響があったようだ。前作への反論に対する答えなども書かれているので、もしかすると先に前作を読んだ方がいいかもしれない。

「もてない男」の立場から、ここまで「もてない男」を深く分析をした主張を見たことがない。「もてる男」の変遷や、現代における「もてない男」の立場や状況などを改めて知ることになる。

 さまざまな恋愛論を見ると、かっこうつけているのかどうか知らないけれど、恋愛が「できない人の意見」はほとんど見られることなく「選択しない人」の意見ばかりが目に付く。著者はそこにも、適切にツッコミを入れている。ベストセラーとなった「負け犬の遠吠え」では「恋愛は結構しているけれど結婚はできない」という女性たちが主役であって、「恋愛も結婚もできない」人たちは結構いるのではないか?と著者は言う。「恋愛はできるけれど結婚はできなかった」を「負け犬」とするのならば、恋愛すらできない男女を「犬の腐乱死体」呼ばわりするのに等しいという例えは、なかなか痛快だ。(著者も言ってるが別に腐乱しなくてもいいのだが…)

 文壇におけるもてるもてないについての話は、あまりそのあたりの知識がないので、ちょっと難しかったが、著者自身が、出会い系サイトに実際に潜入してみたり、結婚情報サービス会社に登録しに行ったりといったレポートはとても興味深かった。