困ってるひと/大野 更紗
困ってるひと 大野 更紗 ポプラ社 2011-06-16 |
これまで、いたって健康だったのに、突然、筆舌し尽くしがたい苦痛を伴う謎の病気に罹り、検査するだけでも苦しく、結局は「対処しようがない」なんて言われたら…。
もし自分が著者のような病気になったとしたら、はたしてこれまで通りの自分でいられるだろうか? という不安に襲われた。
著者は、極めて明るく振る舞っているので、一瞬忘れてしまいそうになるが、書かれていることは、極めてつらいことばかりだ。
こういった自身の病気をテーマにした本の中では、かなり異質かもしれない。あまりにあけっぴろげで、自分をさらけ出している。
そういった点で、評価は分かれるかもしれない。
また、こう言ってはなんだけど、著者は、いわば確信犯的に周囲に相当な迷惑を掛けている。
本来、社会復帰を支援するソーシャルワーカーに何度も通い詰め、しまいには「ここで話することはありません」とまで言わしめてしまう。
同様に、主治医や看護師、友人たちにも、かなりの迷惑を掛けているところも垣間見えたが、致し方ないかな…と思われる部分もあって、考えさせられる。
果たして、自分だったらどうだろうか?と。
ちょっと気になったところは、自分の両親に対して、パパ、ママというのは、どうかと思った。家族内でそう呼ぶのは、まったくかまわないけど、せめて、多くの人の目に触れる本の中では、避けた方がよい気がする。
100万回の「よくなってます」より、1回の「よくやってます」.のほうが嬉しい…というのは、実際に体験した著者の素直な気持ちがよく表れているような気がした。