宇宙に恋する10のレッスン/小坂淳・片桐暁
宇宙に恋する10のレッスン 最新宇宙論物語 小阪 淳 片桐 暁 佐藤 勝彦 東京書籍 2010-07-02 |
恋愛小説と最新の宇宙論を組み合わせた異色の本だ。
大学で天文学を教える非常勤講師のキョウコと、文系学部に所属する大学生コウイチが、恋愛小説にありがちな、ちょっとあり得ないようなふとした出会いから、話は始まる。
宇宙の形、その始まりと果て…など、宇宙について感じる疑問の数々…。
これまでの研究で知り得た、ともすれば、難しくなってしまう宇宙論を楽しく知ることができる。さすがは恋の力だ。
恋愛小説のなかで宇宙論が語られ、さらに、補足説明としての講義が10ある。
宇宙の“果て”を見ようとすると、宇宙の“始まり”を見ることになる。つまり過去の宇宙だ。
それは光の進む速さは有限であり、その光が自分の目に届くためには、必ず時間が必要だからだ。
遠くを見ようとすればするほど古い時代を見ることになる。つまり、いま“この瞬間”の宇宙を見ることは決してできない。どうしても過去の宇宙を見ることになる。
これは、宇宙というスケールの大きな話ばかりでなく、どんなに近くの物であっても同じだ。いまのこの瞬間を見ることができないのだ。
アンドロメダ銀河は、約230万年前の姿とも言われる。それは光を発して地球に届くまで約230万年掛かるからだ。
最も近い恒星である太陽の光が地球に届くまで8分19秒掛かる。つまり8分19秒前の姿だ。月ですら約1.28秒も掛かる。
目の前に滑り台があるとすれば、これは今この瞬間の姿ではなく、約10ナノ秒前の姿だ。
宇宙と、いま自分たちが生きている世界は決して切り離れているわけではなく、その延長線上にある。自分たちの肉体そのものも、究極的には宇宙を構成する物質によって構成しているという事実も、頭では分かっているけど、考えてみると不思議な感じがする。つまり、自分自身も宇宙の一部ということだ。
本書の著者の一人は、文部科学省が監修した「一家に一枚 宇宙図 2007」の作成に携わった方なので、こちらも参考になる。(詳しい解説は、こちら)
真実は確実にそこにあって、努力をすればその真実に近づくことができるけれど、知れば知るほど、新しい疑問が生まれ、決してすべてを知ることができない。
宇宙も、恋愛も同じかもしれない。
もう少し涼しくなったら、夜空を眺めて、宇宙のことをじっくり考えてみたい。