3636 帰りのできごと2012秋
今日の会社からの帰り。
駅に着き、いつものように自転車で自宅に向かう。
歩道のある片側1車線の道路で、車道の真ん中近くを、よろよろと歩いている人の姿が確認できた。
自転車でゆっくりとその脇をすり抜けると、どうやら、おばあさんのようだった。
そのとき、なにか違和感を覚えた。
その違和感が何なのか?それを確かめたくて、自転車を止め、もとの道を戻り、おばあさんの姿が見えるところにやってきた。
!
おばあさんの格好はパジャマだ。
この時間ともなれば、空気はずいぶんと冷えている。
そして、あきらかに合っていない大きめの女性用の靴。
足が弱いようで、歩くスピードは、かなり遅い。
僕の頭を過ぎったのは、いわゆる認知症だ。
この“認知症”という病名には言いたいことがあるが、今日の話の本筋から離れるので、別の機会に。
ちょっとずつおばあさんに近づいてみた。
おばあさんの視線が定まっていない様子にますます心配になってきた。
このまま放っておくわけにはいかない気がしてきた。
でも、どうしたらいいんだろう?
声を掛けてみるか?
いや、少し行った先にある交番まで行って、おばあさんのことを話してみようか?
でも、交番に行ってる間に、何かあったらどうしよう?
やっぱり、声を掛けてみることにした。
「だ、大丈夫ですか?」
とりあえず、思い切って出た言葉が、これだった。
すると、おばあさんが…
「はい。いえ、大丈夫です!すぐそこの自宅に帰るだけですので。」
おばあさんの想像以上にしっかりとした声量と声。
その声は、先程抱いた僕の心配は何だったんだろう?と思わせるには十分だった。
とりあえず、安心はした一方で、お婆さんの言っていることは本当なのか?という気にもなってきた。
結局、違和感のぬぐえないままの帰宅となった。
そういえば、去年の同じくらいの時期、やはり帰りがけにちょっとした出来事があったのを思い出した。
超高齢化社会を迎えつつある現在、こういったできごとは、そう珍しいことではなくなるのかも知れないなと思った。