死体入門!/藤井 司
死体入門! (ナレッジエンタ読本 7) 藤井司 メディアファクトリー 2008-03-19 |
死体にまつわるさまざまな話題で満載の本。
本書の巻頭カラーページから、いきなりインパクトの強い絵が載っている。
これは、鎌倉時代に描かれた「九相詩絵巻」というもので、生きている人間が死に、腐敗し、死体がなくなるまでを、9つの段階に分けて、かなり詳細に描かれている。
本書では、この絵を参考にして、まさにその様を丁寧に解説している。もしこれが写真による解説だったら、誰もが読める本にはならなかっただろう。
死体は決して特別な存在ではない。
目に映るたくさんの人々。彼らは、50年後にはその半数以上の人々が死体になっている。100年後には、出会ったすべての人が死体になっているだろう…と言われると、ちょっと不思議な感じがするが、確かにその通り。ごく当たり前のことなのだけど。
人間が死ななかったら、大変だ。生まれた人が全員生きていくには、この地球は狭すぎる。誰かが死ぬことで、新たに誰かが生まれる場所ができるのである。
死体といえば、ミイラの存在は外せない。本書でもかなりのページを割いて、ミイラについて解説している。
人は死んでしまうとその身体は腐敗を免れない。しかし、その身体を永遠に残すため、大変な手間を掛けてミイラが作られた。だから、ミイラになるのは、ミイラを作る人にとって大事な人物だった。
そして現代…。年間75体。これは一年間に日本で発見されるミイラの数だそうだ。もちろん過去のミイラと違い、自分の意志ではなく“結果的”にミイラ化してしまった数だ。
著者の言葉が印象的だ。
過去のミイラは、人々の愛と敬意の対象であった。
現代のミイラは、孤独である。
アメリカでは、自動車衝突実験で、ダミー人形ではなく本物の死体を使っていることがあるとか、腐敗がどう進むのかを実際に確認するために、1ヘクタールの土地に20体の死体が放置され、その調査、実験が行われているとか、死体にまつわる興味深い雑学ばかりで、知的好奇心は満たされる。
ただ、内容の性格上、多少気分が悪くなりそうな記述や場面もあったので、多少抵抗がある人には、体調と読む時間帯を選ぶ必要がありそう。