月/美月 ココ

■文学・評論,龍的図書館

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美月 ココ

文芸社 2003-08
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ふだん夜空を見上げても、東京では星ひとつ満足に見えないが、月ならば、その姿をはっきりと捉えることができる。ふと見上げた空に、ぽっかりと満月が浮かんでいるのを見つけると、吸い込まれるような、神秘的なものを感じずにはいられない。

満月に魅了された中学3年生の主人公“郁”が、親友の息吹とともに、失われた記憶を見つける一歩を踏み出す。そして、それは同時に、衝撃的な結末への一歩でもあった。

郁と息吹が仲が良すぎるかな?ということと、息吹が有能すぎて物語を引っ張りすぎるきらいはあったが、子供と大人の気持ちが入り交じった繊細な中学生の気持ちがうまく表現されている。

全体を通して情景の描写が素晴らしく、読んでいると、まるで満月を見たときの“吸い込まれるような”感覚を覚える。実際、読み進めていくうちに、読むスピードが速くなっていくのだ。

ネタバレになるので、詳細は割愛するが、どこかファンタジー風でもあり、それでいてサスペンス風でもあり、不思議な読後感を味わえる。

この本を書かれたのは、美月ココさんという方で、たまたま彼女のブログを拝見したのが縁で、ときどきお邪魔させていただている。この本はそこで初めて知ったのだけど、久しぶりに面白い本に出会った気がした。