「嫌消費」世代の研究/松田 久一

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「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち 「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
松田 久一

東洋経済新報社 2009-11-13
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この本では、収入があっても何らかの嗜好によって消費しない傾向を「嫌消費」現象と呼んでいる。

僕は、バブル後世代ではないし、余裕のある収入もないけど、たしかにあまり景気に影響を与えるような消費はしてない気はする。先日の北欧旅行が、かなり久しぶりの大型出費だったけど。

モノが売れなければ、当然ながら景気は上向かない。なんでモノが売れないのか? そもそもなんでモノを買ってもらえないのか? 本書では、さまざまな統計を駆使してそれを探っていく。

「戦争における敗戦」と「経済における敗戦=バブル崩壊」が日本人の意識を大きく変え、“世代意識”を形成していると指摘。バブル崩壊は戦争終結後の混乱に匹敵するくらい大きな影響を与えたのだ。それから将来に対する不安も、購入意欲を減衰させる一因というのも容易に理解できる。

興味深かった話を取り上げてみると…

低収入層の増加が消費を減少させているという説について。

若者層はフリーターや派遣などが多く非正規雇用率が高いために収入が安定せず、消費が低くなる傾向にある…という話は聞いたことがある。そういうこともあるだろうな…とは思っていたが、このことに著者は、異を唱えている。

実際に挙げられたまざまなデータから類推すると、著者の主張通りだろう。低所得者層の増加は若年層ではなく高齢者層の増加によるもののようだ。若者層の親との同居率が高い傾向から考えると、むしろ可処分所得は多いはずで、必ずしも消費が低くなるわけではないはずなのだ。

なるほど、感覚やイメージだけで考えると実態を見誤るという典型かもしれない。

そして、もっとも興味を持ったのは、物を買わなくなった理由そのものを挙げたところ。それは「みせびらかし」の影響と「先延ばしの習慣」によるものではないかと著者は指摘する。

モノを選択は、そのモノを購入したことによる価値の内容とともに、他者からどう評価されるか?ということも重要な要素になる。「だっせー!そんなの買ってどうするんだよ?」と言われて嬉しい人はあまりいないだろう。かつての自動車は“持つこと”だけでも、他者への強烈なアピールになった。しかし、いまは明らかに違う。明確な理由もなく車を持っていれば、「なぜ?」と尋ねられてしまう時代だ。

もうひとつの理由は、購入は時間が経てば経つほど得られる利益が大きくなる傾向にあるということだ。バブル後の世代はインフレを知らない。デフレの世界ではつねに物価は下がる傾向にあるし、モノ自体…特に家電やIT関連機器などは、1年も経たないうちに値段がどんどん安くなるというのは、誰でも知ってることだ。これを習慣的に身につけてしまうと、結果的に、新商品がでてすぐに飛びつくより、ちょっと待った方がいい…という判断になるのは当然のことかもしれない。

この2つの理由を克服したとき、初めてモノを買ってもらえることになるわけだ。理由はわかったけど、この克服がとても難しいのだが、理由が明確になればその対策もしやすくなる。

一消費者としての自分としても、また流通に関わる仕事をしている自分としても、とても興味深い指摘だった。

本書全体を通して、多少難しい言葉や統計の数字などが並ぶため、取っつきにくいところもあるが、ややもすると思いこみで判断してしまいがちなことを、きちんと定量的な判断をしていくというプロセスは、学ぶところが多かった。