2286 非常事態の伝え方
今朝、いつものように駐輪場から駅に向かうために信号待ちをしていた。
ふと、すぐ横にいた二十歳代くらいの若い女性に対して、軽い違和感みたいなものを感じた。一瞬何がおかしいのかわからなかったが、見る位置を変えたら、それは明らかにおかしいのがわかった。
スカートのファスナーが10cmばかり下がっていたのだ。
ファスナーがしっかりととまってないために、今にもずり落ちそうになっていた。
さぁ、どうする?
最初は、見て見ぬ振りをしようかとも思った。信号待ちの最中、見知らぬ男が突然声をかけてくるのだから、変に警戒されるかもしれない。ましてやスカートのことを指摘するなんて、痴漢か何かに誤解されたらどうしよう…と、いろいろな不安が頭をよぎる。
しかし、遠くで駐輪場のおじさんも気付いたらしく、目が女性のチャックを追っていたのを僕は見逃さなかった。
危機はそこまで来ているのだ。意を決して声をかけることにした。
「あ、あのー、すみません」
ごく自然に声を掛ければいいのに、どもってしまった。おかけでこの女性は半歩以上後ずさりをすることとなった。明らかに引いている。
「スカートが…」
と言ったところで、相手は非常事態に気づいたらしく「ウソっ」と慌てて、ファスナーに手を当てていた。とりあえずミッションは完了したので、大急ぎで信号を渡り、駅に向かった。なぜか必死だった。
果たしてこういうときは、どうするのが正解だったのだろう?
同僚の女性と話し合った結果、直接本人ではなく、第三者の女性に告げ、その女性を介して、この非常事態を伝えるのが抵抗が少なくて良いのではないかという結論に達した。