組織行動の「まずい!!」学/樋口 晴彦
組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか 樋口 晴彦 祥伝社 2006-06 |
いかに技術が進歩しても、トラブルや障害、事故は絶えることはない。ときとして、信じられないような大きな事故が起きている。
本書では、JR福知山線脱線転覆事故、チェルノブイリ原発事故、三菱重工長崎造船所で発生した大型客船「ダイヤモンド・プリンセス号」の火災事故、スペースシャトルチャレンジャー号の空中分解事故、えひめ丸衝突事故、日本初の臨界事故となったJCOの事故といった、有名な事例を挙げて、事故の裏に潜む組織の問題点を洗い出している。
WBC誤審騒動をはじめ、記憶に新しい事例が多いので、大変興味深く読むことができた。
ちょうどこの本を読み終わったころに、埼玉県の市立プールで、排水口に吸い込まれた小学生が死亡するという痛ましい事故が起きた。
すでに一部で報道されているように、これまでもいくつかのトラブルが発生していたにもかかわらず、きちんとした対策をとっていなかったようだ。組織がこれらのトラブルを重大なものとして認識されていないかが浮き彫りになる。
ただし、逆に安全を重視しすぎても問題が出てくる。あまりに規律を厳しくしすぎて、結果的にそうした規律を守らなくなるなんてことは往々にしてある。本書で紹介されていた「上に方針あれば、下に対策あり」という言葉は、そうした状況をとてもよく表している。規律違反が当たり前になり、結局は、重大な事故を引き起こすことになる。
単に厳しくすればいいってものではないのだ。過去の重大なトラブルを学ぶということはとても重要なことだと実感させられる。
著者は、長年、警察や外務省、内閣官房といった国家公務員として勤めてきた人物。まだ警察大学校に所属しているということもあるためか、国や自治体という組織で発生した問題については、ほとんど触れられていないのは残念。