人体 失敗の進化史/遠藤 秀紀

■いきもの,龍的図書館

433403358X 人体 失敗の進化史
遠藤 秀紀

光文社 2006-06-16
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この本を読むと、動物の進化がきちんとした設計図に基づいているわけではなく“場当たり的”な設計の変更の上に成り立っていることがよくわかる。

すでに存在している身体の部品をさまざまな形で代用して、必要な機能を得るのが進化の過程なのだ。

たとえば、飛ぶという点では同じ鳥とコウモリの違い。

鳥の翼は、肘から手首までの骨を長細く伸ばして作られている。手首から先の掌や指は、骨同士が癒合してしまった。それに羽毛を付けることで翼の面積を確保している。

コウモリの場合、指と掌の骨を長く伸ばすことで翼を得た。さらに後足と尾も翼を構成する一部になっている点が、鳥と大きく異なっている。また翼は、鳥のように羽毛ではなく皮膚と薄い筋肉を使っている。鳥と違って指と足を使った翼は、とても器用に変形させることができるために、かなり自由な飛行ができる…ということは、想像に難くない。

でも、こうした違いのために、鳥にできて、コウモリにできないことができてしまった。鳥のように歩いたり、水面を進むといったが、一切できなくなったのだ。後足でかろうじてできるのは「逆さに吊られるということだけ」になってしまった。

そうした設計の変更を重ねてできた人間には、当然設計の“無理”から生じる病気が少なくないと聞くと、すごく理解できる。冷え性、椎間板、肩こり…これらは、みな人間が進化を遂げる過程で無理をした結果なのだそうだ。

人間の進化の過程を追うばかりでなく、科学の泥臭さや基礎研究の大切さなども合わせて考えさせられる話がたくさん出てくる。僕にとっては少々難解な部分もあったが、楽しく読み進めることができた。