イラクの中心で、バカとさけぶ/橋田 信介

■社会・政治・事件,龍的図書館

4776201321 イラクの中心で、バカとさけぶ―戦場カメラマンが書いた
橋田 信介

アスコム 2004-01
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 2004年5月イラクで日本人フリージャーナリストの橋田信介さんと小川功太郎さんが亡くなったことは記憶に新しい。ということで、さっそく橋田信介さんの遺作となった図書館に予約を入れたのは6月のことだ。それから待つこと2ヶ月余り。図書館から連絡があったその週末に借りてきて、一気に読んだ。命を張って取材している割には、当の本人は至って気楽なもので(本を読む限りでは)、今回命を落とした結果は残念ではあるけれど、それはそれで仕方がない…ときっと本人は思っているのだろうなと思えた。戦争について大上段に構えるのではなく、現場で取材したありのままの事実を伝える…当たり前のことを当たり前にやってきただけ…という調子で書かれた本書は、生きるか死ぬかというギリギリの話の連続なのに、それを感じさせない文体で、気軽に一気に読めてしまった。それでも、いくつかは、いろいろ考えさせられるところもあった。そのうち、いくつか挙げてみると…
「農耕社会ではヨソモノに対して都合が悪い情報は隠す。問いつめると『沈黙』する。遊牧民族でも同じように隠すが、問いつめると『ウソ』を教える。どちらが良い悪いではなく、すでにそれは習性となっている(p65)-。
「『戦場』を語っているだけで『戦争』を語っているのではない。戦場を反対することはバカでもできる。戦争を反対することこそが政治を語ることにつきる。(p266)」
「生き抜くために全力をあげる。戦争国家では、命はかけがえのないものとして大切にされる。平和な社会で生きる日本人は、ヒマだから精神の均衡を失って自殺したり、面白半分に人を殺したりする。平和国家では逆に命は軽んじられている。(p270)」
(2004/7/31) 【★★★★☆】 -04/07/31更新