鉄道忌避伝説の謎/青木 栄一

■鉄道,龍的図書館

464205622X 鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町
青木 栄一

吉川弘文館 2006-11
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江戸時代から栄えているような町の最寄り駅が、町の中心から離れたところに作られているケースは少なくない。

中央線の東中野から立川あたりまでの25kmにもわたって一直線に線路が敷かれているが、甲州街道沿いの宿場町からは離れたところを通っているし、僕の地元の川越も、街の中心部からかなり離れたところに駅がある。

こうなっている理由として「汽車の火の粉で火事が起きる」とか「町が寂れる」といった理由で反対運動が起きたために、やむを得ず町はずれに駅ができた…という話。誰もが一度は耳にしたことがあると思う。

しかし、実際にこうした反対運動が起きて、そのために鉄道のルートが変わったり駅が町はずれにできたということを示す明確な文献は存在しないという。こうした“伝説”について、さまざまな文献をあたりながら丁寧に検証している。

実際のルートの決定には、できるだけ短い距離で鉄橋やトンネル、住宅密集地などを避けるようにしながら、より効率的に鉄道が敷設できるルートを最優先した結果でしかないという。

鉄道関係の専門書でも、無条件に鉄道忌避伝説が事実として取り上げられていることもあって、多少?鉄道に興味や関心が高い僕でさえ誤解してきたし、特に鉄道に関する知識のない人にとって、これらの“伝説”を疑うことなんてできないだろう。またこうした伝説が生まれる背景には、学校教育なども加担しているというのも、興味深い。

ときには常識となっていることを疑ってかかってみることも必要なのかもしれない。