6290 市谷の杜 本と活字館
長らく大日本印刷(DNP)の市谷工場の再開発工事が行われていたが、ようやく完成したらしく、そこに新しい施設ができた。
活版印刷と本作りの文化伝える「市谷の杜 本と活字館」と名付けられた施設では、DNPの事業の原点である活版印刷の工程を再現し、文字のデザインや活字の鋳造(ちゅうぞう)、印刷・製本までのプロセスを紹介している。
今年の1月にオープンしたそうで、知ったのちょっと前だったが、完全予約制のために、今日ようやく来館することができた。
山手線の内側にありながら、最寄りの駅からも結構歩く。
住宅街を抜けると、広大な敷地と超高層ビルができていた。

本と活字館は、空襲に耐え改築を繰り返しつつ、長い間営業所として使われてきた建物だ。
予約の時間に訪れると、まずは丁寧に見学の説明があり、写真撮影もOKとのこと。
まず活字が作られるところから、順路通りに見学していく。
事前予約のみの人数制限しているために、見学者は数人程度しかいないから、係員のお姉さんのほうが人数が多い。
ところどころで、お姉さんが説明をしてくれたのだが、印刷や活字について知らないことばかりだった。
そもそも、活字って何度も使うのが普通だと思ってたが、むしろ1回限りだと聞いて、ちょっと驚く。

言われてみればその通りなのだけど、活字に、印刷の際についたちょっとした傷も印刷に影響するということや、元の棚に戻す手間を考えたら、そのまま溶かしてしまう方が合理的なのだ。
実際に活字を製造する機械も展示されていて、一度生産するとけっこうな本数ができるという。
こうして効率よくできてるところと、文字をひとつひとつ選んで並べていく気の遠くなるような、けっして効率よくできない作業が、渾然一体となったのが“印刷”なんだと思った。



職人技の集大成が、印刷物なのだ。
お姉さんの説明はとてもわかりやすく、とても熱がこもっていた。
どこか、“マニア”的というか“オタク”的なものに通じるところを感じたが、これは活字や印刷が本当に好きだからこそであり、だからこそ、説明ができるのだろうと感心した。
お話を聞いてると、いくら時間があっても足りないくらいだ。


2Fは、小さな企画展示室と工房になっている。
工房での体験は今日はできなかったが、いずれやってみたいと思った。



活版印刷で作られたしおりなどをお土産にもらった。
2Fではこうしたものを自分で作ることができるようだ。
17時の閉館時間が来てしまい、あっという間に1時間が過ぎてしまった。