6202 上田薫展
写実的な絵は“ごまかし”が効かない。曖昧さが一切許されない。
そんな極めて精巧な絵を描く上田薫の作品を集めた企画展を鑑賞。
この埼玉県立近代美術館には、10月にも来たばかりではあるが、おじゃこも自分も写実的な絵に興味があるので、また足を運んだ次第。
こうした、写真のような絵は、当然ながら、対象のすべてが描き込まれている。
人は、無意識のうちにモノの姿を捉えて、ざっくりと理解するが、絵にする場合はそうはいかないのだ。
作者は、制作に行き詰まったときに、頭をクリアにするために、リアルな貝を描いたのを転機として、その後、さまざまな作品を生み出したという。
アイスクリームが溶ける瞬間、ジェリー(ゼリー)をスプーンですくった瞬間、そして卵を割った瞬間…など、静止画なのに、変化する時間までも絵に封じ込めている…そんな感じだ。
興味深く思ったのは、スプーンや卵に写り込んだ、その場所の風景らしきものだ。
天井だったり、窓ガラスだったり…
対象のモノはとても小さいが、実はその空間をも封じ込めているように思えた。
さらには、作者がその作品を作るために写真を撮る自身の姿も封じ込められるようになってるのが面白い。
作者の初期から現在に至るまでの作品を紹介しているので、作者の興味や関心がどんどん変わっていることも理解できた。
とても見応えのある企画展だった。