東京Y字路 /横尾 忠則

■芸術・デザイン,龍的図書館

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東京Y字路
横尾 忠則
国書刊行会; 初版 (2009/10/26)

名前はよく見聞きするし、かなり特徴的でかなりインパクトのある作品が多い。

それだけに、ひたすらY字路の交差点ばかりの写真集の作者が、横尾忠則とリンクしない感じがした。

特別でもなんでもない、ごくごくありふれたY字路ばかりの写真集。

こんなにもたくさんのY字路があるのかと思ったり、実際に見たことのある場所があったり、でも、全体的に、既視感のある、どこかで見たことがるような風景ばかりだった気がする。

こうしたY字路を何度となく歩いてきたからだろうか…ふと、Y字路って、どこか“人生”に重なるような気がした。

二手に分かれるという意味では丁字路もあるが、どちらかと言えば、Y字路のほうが人生に近い気がする。

右か左かみたいにきっぱり分かれることはあまりなくて、「どちらかと言えば」と迷いつつ選んだ方の道を進んでいき、選ばなかった道は少しずつ離れていくことのほうが、実際には多い気がする。

ショートカットしなければ、実際には歩く距離は同じなのだけれど、戻ろうと思えば戻れるという感覚も、丁字路よりY字路のほうが強い。

ここに写っているY字路には、一切、人の姿が写っていない。

そのせいだろうか、既視感があるのに、現実の世界とはちょっと違うところにあるような、不思議な感覚だ。

そして、おびただしい数のY字路の写真のなかに、なぜか、たった1枚だけ、横尾忠則らしい色で加工した写真が紛れ込んでいたのが印象的だった。

Posted by ろん