「お手本の国」のウソ/田口理穂ほか
先日読んだ本とかぶるが、これまで、日本と外国と比較する場合、とかく、日本がダメで、進んだ外国の先進事例が紹介されることが多かったと思う。
でも、実際のところはどうだろう?
ステレオタイプに考えていることもあるのではないだろうか?
本書では、そうした“お手本”の国で暮らす日本人が、日本で考えられてる意識と、現実のギャップを紹介する。
取り上げられているのは、「ドイツの戦争責任問題」「フランスの少子化対策」「フィンランドの学習法」「イギリスの2大政党制」「アメリカの陪審員制度」…と、いずれも、その国で、“うまくいっている”とされる、“お手本”とされる事柄ばかりだ。
例えばフィンランドの例。
落ちこぼれもも競争もないという教育は、たしかにそういった配慮もあるが、飛び級や落第もちゃんとある。
そして、競争…エリート教育的な考え方については、フィンランド独特の事情があるようだ。
日本とほぼ同じ面積に、北海道より少ない人口のフィンランド(540万人)において、子供の時点での学力でふるいに分けていたのでは、国を担っていく進学組がほんの一握りしか育たない。
つまり、効率よく国力の充実を図るためには、機会を平等に与える必要があったというのだ。
また、フィンランドは高福祉国家で、例えば、医療費がかからない…ということにはなっているが、実際には、診察までに数か月待ちさせられるとか、老人ホームに入りたくても、実際には、空きが見つからない…といった状況を聞けば、必ずしも、“お手本”が目指す姿でないことがわかる。
その他の事例も、とても興味深いことばかりだ。
いずれも言えることは、お手本とされる特徴は、それぞれの国の事情があってのことで、実際は、そのまま日本に適用できるわけない。
もちろん、参考にする部分はたくさんあるし、決して間違っているということでもないのだから、本書のタイトルのように、「ウソ」と言い切ってしまうと、ちょっと言い過ぎかなぁ…と思ってしまう。
ウソではなく、まずは、前提として、その国の状況をきちんと知って、その上で、お手本とすることを学ぶ…という順番があると認識することが大事だと思う。