オリンピックと東京改造/川辺 謙一

■交通,龍的図書館

 

先日の”ブラックボランティア”も含めて、東京オリンピックの競技自体より、そのイベントに至る経緯や準備などの舞台裏などに興味がある。

本書はオリンピックというイベントを通じて、東京がいかに改造されたかを紹介する。

特徴的なのは「序章」だ。本書は、序章と5章で構成されるが、実に、全体の3分の1以上が序章が占める。

序章は「プレイバック1964年」という、前回の1964年に開催された東京オリンピックの様子を紙上で再現している。

羽田空港に降り立ち、完成したばかりの首都高速を通り、車窓からは、こちらも開通したばかりの東京モノレールや東海道新幹線の様子が見え、都心に入っても止まることなく、スムーズに代々木の選手村に向かうシーンは、初めて体験する人たちにとっては、相当衝撃的だっただろうな…と想像がつく。

その序章こそ、おそらく著者が一番伝えたかったことなのだろう。

いま見てきた、これらの交通インフラは、1964年の東京オリンピックのために作られた…わけではない。

そりゃそうだ。巨大なインフラ投資を、たった2週間のイベントだけのためにするわけがないのだ。

たまたま、ほぼ同時期に整備が進んでいたため、インフラ整備を進める口実として、オリンピックが利用されたという。

本書は、1964年の東京オリンピック開催を契機に、東京がどう変わったかを知るために参考になる。

ただ、内容が盛りだくさんになってしまって、取り上げられた記事のボリュームは、どうしても少なめ…というか、物足りなさを感じてしまった。

もっと知りたいと思うような箇所があちこちあったが、それはあらためて別の資料をあたるべき…ということなのかもしれない。

Posted by ろん