4107 立場を変えて考えてみる
たしかに、残念な判決だった。
徘徊の症状がある認知症(この病名は、いまだに違和感があるが…)の男性(91歳)が電車にはねられ死亡した事故に対して、JR東海が遺族に賠償を求めた裁判の判決。
名古屋高等裁判所は男性の妻に責任の一部を認め、JRの求めた賠償額の約半額となる359万円を認める判断を下したのだ。
いろいろ考えさせられる裁判だし、遺族には大変酷ではあるが、やはり裁判所の判断は正論だろうなぁ…と思った。
JR東海に損害を与えているのは事実だからだ。
これは大手鉄道会社が訴えたから見えにくいけど、もしこれが個人であったらどうだろう?
相手が、認知症で徘徊していた人だからといって、自分の受けた損害を帳消しにできるだろうか?
仮にその個人が自営業だったら、事故の対応で当然仕事は滞るし、状況を理解されないと信用問題にも発展しかねない。今後の生活にも影響するだろう。
認知症だから大目に見るというわけにはいかないような気もしてくる。
裁判所は血も涙もない…わけではなく、逆の立場で考えたときも同じようなことが言えるか?ということだと思うのだ。
損害を受けても“泣き寝入り”することを強要するというわけにはいかないだろう。
介護をしてきた妻も要介護認定を受ける状態であったといわれ、その妻が、ほんのちょっとまどろんでいるわずかの間のできごとだった。
じゃあ、徘徊の症状があったら完全に閉じこめるしかないのか?という極端な発想ではなくて、もっといろいろ対策を練るべきだと思う。
こうした事故に備えた保険を作るとか、徘徊がひどい場合には公費でGPSセンサーを取り付けるとか…。
いろいろ調べてみると、例えば、福岡県大牟田市では「安心して徘徊できるまちづくり」をめざして、認知症を学んだ認知症サポーターの養成や、声掛けの仕方などを紹介するなどの取り組みが行われているらしい。
今回の判決で、認知症のケアが個人だけではとても対応しきれないということをあらためて思い知らされた。
これをきっかけに、関係者や自治体などが中心となって寄り具体的な対策を講じて欲しい。
そして、できることなら、JR東海は賠償の請求を取り下げて欲しい。
妻の立場、息子の立場で考えたら、やっぱりつらすぎる。