ご近所富士山の「謎」/有坂 蓉子

■歴史・地理,龍的図書館

 

ユネスコの世界文化遺産登録により、注目を集めた富士山の夏山シーズンが、今日終わったそうだ。

古今東西、富士山は、多くの人たちを魅了してきた。

江戸時代から明治にかけて…ごくふつうの人たちが、富士山に思いを馳せ、その思いに突き動かされ、ついには、ご近所に「富士山」を作ってしまう。

それが富士塚だ。

最低でも300、実際にはもっと多いと言われる富士塚。

文献は乏しく、謎も多いという富士塚。

そんな、富士塚に興味を持ち、大学卒業後12年を過ごしたアメリカの永住権を放棄してまで、富士塚にのめり込んでしまったのが、この本の著者だ。

僕自身も、これまで街歩きの途中で、いくつかの富士塚を見学してきた。

あちこちの富士塚をただ見て回るだけでも楽しいが、富士塚ならではの、お約束や定型のフォーマットを知ることで、より楽しくなる。

それは、芸術作品や建築の楽しみ方に似ていて、作った人と、時代を超えた対話ができるのだ。

富士塚は、あくまで富士山のミニチュアなので、本物の富士山にあるものが、ほぼ揃えられているのが、非常にわかりやすく、楽しい。

頂上には奥宮、中腹には神社、烏帽子岩や石碑、もちろん登山道には合目石が…。なかには、大沢崩れまで作り込まれた富士塚もあってびっくり。

本書は、3章に分かれており、第一章では富士塚の歴史や詳細を紹介、第二章では、東京、千葉、埼玉の代表的な36カ所の富士塚のガイド、そして第三章では、富士塚のメインイベントである山開きのレポートで構成されている。

古くて新しいお江戸パワースポット 富士塚ゆる散歩

丹念な取材から、著者の、富士塚好きが十二分に伝わってくる。

まさに、富士塚探訪のバイブルとも言える一冊で、自分なりの楽しみ方を見つけるきっかけになりそうだ。

さらに、詳細を知りたくなったら、同じ著者の「富士塚ゆる散歩」を。

これまでも、いくつか富士塚を見てきたけど、これからは、もっと本腰を入れて富士塚を楽しんでみたいと思った。

Posted by ろん