ガムテープで文字を書こう!/佐藤 修悦
ガムテープで文字を書こう! ―話題の新書体「修悦体」をマスターして 佐藤 修悦(さとう しゅうえつ) 世界文化社 2009-04-10 |
昨日、日暮里あたりを歩いたのだけど、そこで久しぶりに修悦体を見かけた。
これらの文字は、工事現場の誘導員である佐藤修悦さんが独自に生み出したオリジナルフォントで、すべてガムテープで作られている。
“フォント”がこれほど注目されたのは、かなり珍しいのではないだろうか?
いまでこそ、作者の名前から“修悦体”と呼ばれるようになったが、初めて新宿駅の工事現場で見かけたときは、斬新なのに、どこか懐かしいというか、古いというか、独特のインパクトに軽いショックを受けたのを、鮮明に覚えている。
この後、もうずいぶん前だけど、ふたたび日暮里駅でこの文字に再会したころには、インターネット上で、結構有名になっていた。やはり注目する人はいるんだなぁ…と。
修悦体を、初めて世に知らしめたという人へのインタビューが、僕の思いを代弁している。ちょっと長いけど抜粋。
日本一の昇降客数を誇る新宿駅で、佐藤さんはいわばもっともぜいたくな“展覧会”をずっとやっていたわけです。でも、僕らが取り上げるまでは、誰もその面白さに気がつかなかった。すごくふしぎなことですよね。ただのガムテープの文字だったものが、誰かが「これは」って騒ぎはじめたとたんに、エンターテイメントに変わっていく。それが面白いと思うんです。
映画タイトルにも採用 |
映画「まぼろしの邪馬台国」でタイトル文字として採用された経緯を東映社長にインタビューしたり、修悦体が採用された作品、ガムテープの豆知識なども載っているが、本書のタイトル通り、実際にガムテープで修悦体を作成する方法にかなりのページが割かれている。
音楽アルバムでも採用 |
「有言実行」という文字を例に、非常に細かな制作過程を写真付きで紹介。「売り上げアップ」、「運動会」、「百円均一」、「喫煙所」、「節水」などなど、案内用のサインはもちろん、告知やスローガンといったシチュエーション別の表示まで、ガムテープで文字を作る際の注意書きが事細かに載っている。
また、それぞれの例に対して、難易度を★で表し、大きさや制作所要時間などとともに説明している。
もっとも、ガムテープで文字を書かなきゃいけない人って、それほどいないとは思うけど、見ているだけでも、なかなか楽しい。ただ、どの文字を見ても、やっぱり日暮里駅を思い出してしまうのは、僕だけだろうか?
最後に、佐藤修悦さんが手で書いた文字が載っているのだけど、それは、まさにガムテープで書いたのとまったくと同じ形(フォント)だったことが、もっとも興味深かった。