怖い絵/中野 京子
怖い絵 中野京子 朝日出版社 2007-07-18 |
絵画については、まったくの素人といってもいいくらい何も知らない。だから、誰がどんな絵を描いているかなんて、ほとんど知らないし、○○派の作風なんて言われても分からない。だから、僕が絵を鑑賞するというのは、良くも悪くも、その絵に描かれている対象そのものをありのまま認めるということになる。
それでも観察力があればいいのだけれど、たいていはざっと本当に表面的な部分だけしか見ていなくて、細かな部分まで意識が及んでいないことがほとんどだ。
そもそも、「なぜおびただしい数の天使が飛び回っているのか?」とか、「なぜ絵の本題とは無関係と思われる老婆がいるのか?」…といった疑問を感じても不思議ではないのに、絵を前にするとそうした疑問を忘れてしまう。
この本では、一見何でもないような絵でも、そこに秘められた、怖い話を描かれた時代の状況などもわかりやすく解説してくれる。「そもそもなぜこの絵が描かれているのか、その目的は何か?」ということがわかると俄然面白くなる。
タイトル通り、まさに“怖い絵”もあるが、むしろそうではない絵の怖さを知ると、より一層怖く感じる。さまざまな20作品の絵が紹介されていて、どれも大変面白かったが、その中でも気になった絵をいくつか挙げてみる。
ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」 |
ティントレット「受胎告知」 |
クノップフ「見捨てられた街」 |
ジョルジョーネ「老婆の肖像」 |
ダヴィッド「マリー・アントワネットの最後の肖像」 |
どのあたりが怖いのか?ということは、実際に読んでもらうとして…この本を通じて、ちょっと面白い経験ができた思いがする。
続けて続編も一気に読んだ。“2”の方は、見た目も怖い絵が多くなっている気がする。なんとなく。
ただ2冊とも「惜しい!」と思ったのは、肝心の絵が、本のページをまたがってしまい、特に折り目あたりが、かなり見えにくくなっているという点だ。絵を鑑賞する根幹の話なので、このあたりの配慮は欲しいと思う。
怖い絵2 中野京子 朝日出版社 2008-04-05 |