風の中のマリア/百田 尚樹
風の中のマリア
講談社 2009-03-04 |
戦いに明け暮れる、ヴェスパ・マンダリニアの戦士マリア。仲間たちからは“疾風のマリア”と呼ばれ、尊敬を集めている…。
ヴェスパ・マンダリニアとは、オオスズメバチの学名。つまりマリアは、オオスズメバチのワーカー(戦士)、なんと、ハタラキバチの話なのだ。
彼女のドラマチックな一生を通して、オオスズメバチの生きる世界がいきいきと描かれている。一生といっても、彼女が成長してワーカーとなってから、たった30日しか生きられない。
自分たちは何のために生きて生きていくのか?と不安や悩みを抱えつつも、本能として自分たちが生まれてきた宿命を感じ、本能の命じるままに生きていかざるをえない姿には、感動させられる。
圧巻は戦闘シーン。生きるか死ぬか? オオスズメバチの戦いを間近に見ているようだ。
まさに、オオスズメバチ版大河ドラマだ。
オオスズメバチたちに、自分の運命というものを考えるきっかけを作ってくれたような気がした。
読み終わったとき、オオスズメバチの生態にかなり詳しくなること請け合い。
そして、この話は、空想の世界だからこそイメージできるノンフィクションだと思った。おそらく、実写でも、アニメでも再現できないだろう。読書の面白さも再認識させてくれた。ここ最近で、もっとも面白かった本だと言っても過言ではない。