2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?/西村 博之

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4594053882 2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書 14)
西村 博之

扶桑社 2007-06-29
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いまや、インターネットの世界で非常に大きな影響を及ぼす存在と言っても過言ではない巨大掲示板“2ちゃんねる”。この管理人ひろゆき氏による「インターネット論」。

もともと暇で、面白そうだからと作ったものが、2ちゃんねるであって、それ以外の動機は存在しなかったというのは間違いないだろう。ひろゆき氏にとって、2ちゃんねるは、あくまで個人的に運営している“インターネットの何か”にすぎないというが、実際には、世の中にさまざまな影響を及ぼしている。

インターネットがきっかけとなる事件の多くは、報道によってリアルの世界に広めてしまっていることが多いと指摘する。インターネットの世界でとどめておけば大きくならなかったはずなのに、ニュースで報道されたとたん、特定された個人や対象を探し回るという事象が起きてしまう。インターネットの世界とリアルとの紐付けが行われてしまうのだ。なるほど。

また、2ちゃんねるで書かれたことを鵜呑みにする人が出てきているのは、いままでテレビや新聞で伝えられてきたことがすべて正しいと思っていたことに対する反動だとも言う。2ちゃんねるが存在し続け、支持されている背景は、マスコミが引き起こした問題が原因であるという考えは、マスコミ関係者が聞いたらどう思うだろうか?「宗教に騙された人が悪徳商法に行くのに似ている」という例えは、言い得て妙だ。

多数の訴訟案件を抱えていることもあって、法律の不備や問題にも言及しているが、この中で興味深かったのは、いわゆる“第三のビール”に関することだ。

いま第三のビールが売れているが、これはあくまで日本の税制度上の産物であり、世界的に見ればまったく売れない不思議な存在という。

美味しいビールを作って世界に売り出した方が国益のためになるという意見に同感。法律が技術の発展や利益の見えない足かせになっている事実があるという指摘にも、その通りだと思った。

彼の考え方はとてもロジカル(論理的)で、頭の良さを感じさせる。ともすると、頭の良さが仇となっている面もあるような気がする。佐々木俊尚氏との対談で、佐々木氏がひろゆき氏に対してこんなことを言っていた。

気持ちはわかる氏ロジックとして間違っていないのだけれど、せっかくそうやって頑張っている人がいるのだからそこまで言わなくてもいいかなって思うんだけどな。

確かに身も蓋もない考え方も散見されるが、指摘は、いずれも非常に示唆に富んでいて、インターネットにとどまらず、世の中に対する常識を立ち止まって考えるよいきっかけとなった。