日本航空事故処理担当/山本 善明
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日本航空事故処理担当 山本 善明 講談社 2001-03 |
まさにタイトル通り、著者は日本航空の”数多くの”事故処理を担当してきたプロフェッショナルで、内部でしかわかり得ないようなことをわかりやすく教えてくれる。興味深かったのは、安全対策というものの抱える矛盾について指摘したところ。
元来、安全対策というものは業務の質を改善でなければならないのに、質は外部からは見えないので、安全対策とは評価されない。そこでマスコミや世間一般が納得する形での安全対策のための安全対策を取りがち…というものだ。確かに、反省に基づく対策だといっても、結局何の役にも立たない姿勢を示すだけのパフォーマンスなんてことはよくある。
また、本書後半の統合失調症(かつての精神分裂病)だった機長の操縦するジェット機が羽田沖に墜落した事故は、当時「逆噴射」という言葉とともに社会に衝撃を与えたが、事故に至る経緯をこと細かく書かれていて、事故の背景というものを考えさせられた。
そして、本書中にハインリッヒの法則の引用(1件の重い障害を伴う災害の背景には、29件の軽い傷害を伴う災害があり、そらにその背後に300件の傷害を伴わない災害が発生している)は、読み終わった直後に起こった、六本木ヒルズの回転ドアの事故のケースで数字がほとんど合致していたこともあったことから、非常に恐ろしく感じた。安全対策担当の人はもちろん、経営者や管理者の人にも読んでもらいたい。(2004/3/31) 【★★★★★】 -04/04/04更新