女子と鉄道/酒井 順子
女子と鉄道 酒井 順子 光文社 2006-11-21 |
「負け犬の遠吠え」で有名な著者が、自身の鉄道好きを“カミングアウト”。地方ローカル線はもちろん、山手線やリニアモーターカー実験線まで、日本中を旅した二十数編のエッセー集。
(鉄道は)乗りたいという人はいつでも誰でも乗せてくれる。平等で度量の広い乗り物なのです。鉄道は決して女子供を差別しませんし、切符さえあれば、そして線路さえ続いていれば、どこにでも私たちを連れて行ってくれる。
女性ならでは…という言い方が適切かどうかわからないが、多くを男性が占める鉄道趣味業界?で、これまでにない視点からの意見は読んでいて新鮮。趣味なのだから、決まりなどないはずで、それぞれがそれぞれの楽しみ方をしていい。著者も、ときどき肩身の狭い思いや、多少の恥ずかしさを感じつつも、それを実践している。
車内を歩き回りたい気持ちは山々なのだけれど、「鉄道ファンがやる気マンマンで鉄道に乗っている」と地元の人に思われるのは恥ずかしい、という気持ちがあるのです。「正当な用事があって、私はのと鉄道に乗っているのです」という顔をしていたい、というこの心境は見栄なのか何なのか。
これには非常に同感してしまった。別に後ろめたいことは何もないし、誰に迷惑を掛けるわけではないのに、このような心境に至るのはなぜなんだろう。筋金入りの鉄道ファンからすれば、こういう状態でいること自体「まだまだ修行が足りない」なんて言われそうだが、趣味なのだから、いろいろな立場や考えがあっていい。
“実は”ほんのちょっと興味のあるような人にとっては、最適の鉄道入門書といった感じだが、根っからの鉄道ファンの人も、そうでもない人も、十分楽しく読める。