1677 八ッ場ダム

定点観察

 先日、龍的思考回路の問い合わせフォームから、「草津の中和事業について検索していて、貴ホームページに来ました」という連絡をいただいた。確かに先日草津の中和工場について書いたが、そのページを読んでいただいたようだ。この方によると、この中和事業は首都圏のダム計画と密接な関係があるとのことで、あるサイトを紹介してもらう。このサイトでは、2010年の完成を目指している八ッ場ダムのさまざまな問題点を指摘している。

 八ッ場ダム(これで、「やんば」と読むらしい)は、群馬県の吾妻川の中流に建設が進められているダムで、国土交通省八ッ場ダム工事事務所のサイトによると、「下流域を洪水から守る」ということと、「首都圏への水の供給」という二つの目的を持つとのこと。
 一方、八ッ場ダムを考える会のサイトを見ると、どうやらこのダムの建設にはさまざまな問題を抱えているらしいことがわかる。それぞれの主張を見てみると、争点は同じはずなのに結論がまるっきり異なっている。自治体から水源確保のため早期完成を要望されているという話水があり余っているという話をはじめ、洪水対策だという話治水対策に効果がないという話など根本的なところから違っている。事業推進と事業反対の立場からすれば、どうしようもないことなんだろうけど。これじゃ、何にも先に進まないばかりか、そろりそろりと事業は進んでいく。

 これらの争点を見る限りでは、ダムの建設推進理由になっている、洪水対策も水の供給も、どうしてもその必要性が感じられない。 これまで長らく対策が取られてきた広範囲にわたる洪水よりも、都市に集中して降る雨へ対策の対策の方が大きな問題になっているし、そもそも吾妻川流域で水をせき止めることがそのまま下流域への洪水防止につながるとは思えないし…当然だけど、ダムより上流で洪水をもたらす雨の水をためることができなければ、どんなにダムを造っても無意味でしょう。
 水の供給にしても、これからどんどん少子高齢化が進んでいく社会で、どうして水の需要が増えていくと断言できてしまうのだろう?これまた常識的に考えれば、減っていくと考えるのが自然だし…

 ダムの建設が、かなりの反対運動を経て現在に至っている経緯は、国交省のサイトでもきちんと紹介されている。このあたりは好感が持てる。これまでの苦労を考えたら、ここで事業を見直すということは、かなりの勇気はいることだろう。もちろん本当に必要ならばダムの建設は進めていくべきだろう。
 けれど、ここはもうちょっと踏み込んで、本当に必要なものなのか、ダムを造ることしか選択肢がないのか?といったことをゼロから見直ししてもいいのではないかと思う。幸か不幸か(不幸だけど)、建設はまだまだ途中だからこそ、今なら見直すことできるだろう。国土交通省関係者の勇気に期待したい。

Posted by ろん