7152 企画展「中川 衛 美しき金工とデザイン」
![「中川 衛 美しき金工とデザイン」](https://i0.wp.com/www.ronworld.net/blog/archives/img/2023/08/230805-01.jpg?resize=240%2C180&ssl=1)
パナソニック汐留美術館で開催中の「中川 衛 美しき金工とデザイン」を鑑賞。石川県に伝わる伝統工芸「加賀象嵌」の第一人者の中川衛の初期から最新作までの作品と、金工作家になる前の大学や会社員時代の関連資料を紹介している。
中川衛は、金沢美術工芸大学産業美術学科を卒業し、松下電工に入社して美容家電製品などのプロダクトデザインに携わっている。
興味深かったのは、入社したばかりの中川が書いていた日誌だ。
そこには細かな字で、大勢を前にして話をするのは緊張するとか、作業がぎこちなくなってしまったなど、どこにでもいそうなまじめな新人らしいことが書かれていた。
その一方で、あるデザインに対して「松下電工らしさはどこにあるのか?」と問うている記述もあって、デザインに対するこだわりを感じた。
当時携わっていた製品やデザインなども展示されていた。
家庭の事情で?、松下電工には3年程度しかいなかったようだが、金沢に帰郷していたとき、石川県美術館(現 石川県立美術館)で行われていた鐙の展覧会を観たことがきっかけで、加賀象嵌に魅了されたという。
その後、修行を積み重ね、ついには人間国宝に認定されるのだから、人生何があるかわからない。
彼の作品は花器が多いが、そこに施された象嵌は、まさに現代の作家の生み出したモダンなデザインといったイメージ。
モチーフになっているのも、森や雪、花、小動物といった自然から、住宅やビルなど、さまざま。
事象の瞬間を切り取って、そのエッセンスというか、本質だけ見事に表現している感じがする。
金属だけで色を出しているから、かなり制限があるはずなのに、決して単調になることもなく、むしろカラフルにさえ見てくるから不思議だ。
そして、この製作にあたっては、たった1枚の金属を嵌め込むだけで何時間も掛かってしまうこともあるようだから、本当に気の遠くなるような作業の積み重ねでできている背景を知ると、さらに作品の”奥深さ”を感じる。パナソニック汐留美術館は、いつも写真撮影に厳しいが、今回は限定ではあるが、一部写真撮影が可能だった。
![一部写真撮影可能](https://i0.wp.com/www.ronworld.net/blog/archives/img/2023/08/230805-02.jpg?resize=480%2C360&ssl=1)