4668 見知らぬ人の冥福を祈る
帰り道、シャッターの降りた店の前を通りかかると、女性がしゃがみ込んでいた。
どうしたんだろう?と、彼女の前を見てみると、たくさんの花束やお茶、コーヒー缶、ワンカップなどが置かれていた。
この雰囲気から察するに、この店の前で、誰かが亡くなったのだろう。
その女性が去ったあと、あらためて様子を伺ってみたが、亡くなった方にまつわるような物は何一つなく、故人がどういった方なのかは、まったくわからなかった。
ただ、置かれている花や飲み物の数を見ると、かなり影響力のあった方だったと思われた。
どういった理由によって、ここで命を落としたのかわからないけど、わざわざ、現場まで冥福を祈りに来てくれるというのは、よほど魅力的な人だったのだろう。
ふと、自分がこの世を去ったとき、誰かに思い出してもらえるだろうか?…なんて想像してみた。
と同時に、そういえば、子供のころ、ときどき考えたことのあることだったということも思い出した。
子供のころは、周囲のみんなに思い出してほしいと思ってた気がするが、今は…?
そりゃあ、思い出してくれたら嬉しいけど、嬉しいと思う実体(つまり自分)は、そのときはこの世にいないわけだし、なんだか、どっちでもいいような気がしている。
死んでしまったら、どうでもいいのだから、せめて、生きているときくらいは、ちょっとは頑張らなきゃなぁ…と、わかったようなわからないようなことを考えてみたり…
バタバタした毎日を過ごしていると、まったく意識していなかった、”生と死”というものを、ふとそんなことを考えてしまった。
どのような方が亡くなったかもわからないけど、冥福を祈った。